108I50

68歳の男性。全身倦怠感を主訴に来院した。高血圧症で内服治療を受けているが、3か月前の健康診断では腎機能障害の指摘はなかった。血圧138/80mmHg。尿所見:蛋白(±)、蛋白定量4.6g/日、糖(-)、潜血(-)、沈渣に顆粒円柱とろう様円柱とを認める。血液所見:赤血球304万、Hb 10.8g/dL、Ht 33%、白血球4,000、血小板21万。血液生化学所見:総蛋白6.0g/dL、アルブミン3.8g/dL、IgG 351mg/dL(基準960~1,960)、IgA 26mg/dL(基準110~410)、IgM 12mg/dL(基準65~350)、尿素窒素55mg/dL、クレアチニン4.7mg/dL、尿酸8.8mg/dL、血糖96mg/dL、HbA1c 6.4%(基準4.6~6.2)、総コレステロール230mg/dL。免疫血清学所見:CRP 0.2mg/dL、CH50 38U/mL(基準30~40)。腹部超音波検査で両腎は軽度腫大している。腎生検のH-E染色標本を別に示す。
考えられるのはどれか。
悪性高血圧
急性糸球体腎炎
骨髄腫腎
痛風腎
糖尿病腎症

解答: c

108I50の解説

尿沈渣に円柱が出現している。また尿素窒素とクレアチニンも上昇しており、腎機能障害の存在が分かる。血算では汎血球減少傾向と、免疫グロブリン(IgG, IgA, IgM)の低下がある。最大のポイントは、尿蛋白定量が4.6g/日と多いにもかかわらず、蛋白定性で(±)となっていること。これはつまり、試験紙法では検出されない蛋白が体内で増加しており、それにより他の免疫グロブリンが抑制されている状態を示唆する。これはBence Jones蛋白の産生が増加するタイプの多発性骨髄腫〈MM〉でみられる所見である。画像では、尿細管の管腔内に円柱がみられている。
以上より、多発性骨髄腫〈MM〉による腎障害の診断となる。
a 悪性高血圧では拡張期血圧が130mmHg以上となる。
b 急性糸球体腎炎では腎生検画像で糸球体に異常をみる。
c 正しい。上記の通り。
d 確かに尿酸値は高いのだが、痛風腎では腎生検にて尿酸塩の沈着をみる。
e 糖尿病腎症では、Kimmelstiel-Wilson病変をみる。HbA1cは一見基準値を超えているが、糖尿病の診断基準は満たしていないことに注意されたい。

正答率:77%

テーマ:骨髄腫腎の診断

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