108G61

次の文を読み、61~63の問いに答えよ。
68歳の女性。発熱と食欲不振とを主訴に来院した。
現病歴:3週前から微熱と右季肋部の違和感を自覚していた。2日前から食欲もなくなってきた。15年前に乳癌で右乳房切除術を受けており、再発が心配で精密検査を希望して受診した。
既往歴:53歳時に乳癌で右乳房切除術。60歳時に胆石症で開腹胆嚢摘出術。
生活歴:喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。
家族歴:姉が乳癌。
現 症:意識は清明。身長150cm、体重49kg。体温37.6℃。脈拍88/分、整。血圧130/84mmHg。呼吸数16/分。頸部リンパ節を触知しない。右前胸部と右上腹部とに手術痕を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。
検査所見:血液所見:赤血球423万、Hb 11.9g/dL、Ht 40%、白血球9,600、血小板21万。血液生化学所見:総蛋白7.5g/dL、アルブミン3.9g/dL、総ビリルビン0.9mg/dL、AST 31U/L、ALT 36U/L、LD 230U/L(基準176~353)、ALP 372U/L(基準115~359)、γ-GTP 28U/L(基準8~50)、アミラーゼ95U/L(基準37~160)、CK 42U/L(基準30~140)、尿素窒素12mg/dL、クレアチニン0.6mg/dL、血糖98mg/dL、総コレステロール246mg/dL、トリグリセリド190mg/dL、Na 131mEq/L、K 4.4mEq/L、Cl 97mEq/L、CEA 2.2ng/mL(基準5以下)、CA15-3 15U/mL(基準30以下)。CRP 10mg/dL。腹部超音波検査で肝に占拠性病変を認めたため胸腹部CTを施行した。腹部単純CT(A)と腹部造影CT(B)とを別に示す。
この患者の右胸腹部の診察所見として最も考えられるのはどれか。
波動
叩打痛
振盪音
腹部膨満
血管雑音

解答: b

108G61の解説

「腹部超音波検査で肝に占拠性病変を認めた」とあり、既往歴にある乳癌の再発と肝転移が鑑別に挙がる。が、CEA, CA15-3といった乳癌のマーカーが正常値であり、かつ主訴が微熱であるため、即断は少しためらわれる。丁寧にCTを読影しよう。画像Aでは肝右葉の低吸収域がみられ、これだけではなんとも言えない。決定打は画像B。ここでdouble target signがみられており、肝膿瘍の診断となる。CRP上昇などの炎症所見もこれで説明できる。
a 波動は腹水でみる。
b 正しい。肝臓内の炎症であり、叩打痛は必然的に出現する。
c 振盪音は胸水でみる。
d 腹部膨満は腹水でみる。
e 血管雑音は動脈狭窄でみる。

正答率:59%

テーマ:【長文1/3】肝膿瘍患者の右側胸部の診察所見

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