108D39

46歳の男性。腰痛と食欲不振とを主訴に来院した。2年前に肺扁平上皮癌のため手術を受けた。8か月前に両側の肺と肝臓とにそれぞれ多発転移を認めた。3か月にわたり抗癌化学療法を受け、腫瘍はいずれも著明に縮小した。2か月前に腰痛を自覚し、CTにて第2腰椎への転移を認めた。非ステロイド性抗炎症薬の投与と腰椎への放射線治療を行ったところ良好な疼痛コントロールが得られた。しかし2週前から腰痛が強くなり、同時に全身倦怠感と食欲低下もあり、日中の半分以上を臥床して過ごすようになった。特に最近数日間は腰痛がひどく、内服薬と水分しか摂れなくなった。意識は清明。身長168cm、体重49kg。体温36.9℃。脈拍92/分、整。血圧110/72mmHg。呼吸数18/分。SpO2 96%(room air)。るいそうを認める。胸部に異常を認めない。腹部では右季肋部から心窩部にかけて固い腫瘤を触知する。下腿に浮腫を認める。全身精査を行ったところ、肺、肝臓、骨それぞれの転移巣はいずれも以前と比べて増大していた。血液所見:赤血球240万、Hb 7.9g/dL、Ht 23%、白血球8,800、血小板25万。血液生化学所見:総蛋白6.4g/dL、アルブミン2.4g/dL、総ビリルビン0.9mg/dL、AST 38U/L、ALT 40U/L、LD 826U/L(基準176~353)、尿素窒素15mg/dL、クレアチニン0.8mg/dL、Na 130mEq/L、K 4.5mEq/L、Cl 110mEq/L。CRP 3.3mg/dL。
対応として適切なのはどれか。
維持輸液
肝動脈塞栓術
モルヒネ投与
抗癌化学療法
赤血球濃厚液輸血

解答: c

108D39の解説

肺癌の多発転移があり、ターミナルケアの段階である。
a 水分は摂取できており、維持輸液は不要。
b 全身転移があり、肝癌のみ治療する意味はなさそうだ。
c 正しい。疼痛が主訴にあり、非ステロイド性抗炎症薬だけでは抑制できていないため、オピオイドの投与を考慮する。
d 現時点での積極的抗癌治療は根治を見込めるものではなく、難しそうだ。
e Hb値は7.9g/dlあり、輸血は不要。

正答率:92%

テーマ:癌の骨転移による腰痛と食欲不振を訴える患者への対応

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