104A42

62歳の男性。四肢のしびれと歩行障害とを主訴に妻に伴われて来院した。4年前から手の動かしにくさとしびれ感とを感じていた。1年前から階段を下りるときに手すりが必要になったが、医療機関を受診しなかった。昨日、敷居に足が引っかかりよろめいてから四肢のしびれが強くなり、自力で歩けなくなった。健康診断で軽度の糖尿病を指摘されたことがある。家族歴と生活歴とに特記すべきことはない。意識は清明。身長167cm、体重67kg。坐位はとれるが、介助しても立位は不可能。徒手筋力テストでは上下肢ともほぼ3(fair)である。深部腱反射は上腕二頭筋以下すべて亢進し、Babinski徴候は陽性である。四肢に末梢優位の表在感覚低下を認める。明らかな膀胱・直腸障害はない。頸椎エックス線写真の側面像(A)と頸椎単純CT(B)とを別に示す。
治療方針として適切なのはどれか。
安静
作業療法
放射線治療
固形食の制限
硬膜外ブロック

解答: a

104A42の解説

しびれの主訴に対してまず考えることは障害部位であり、本症例の場合現病歴からは糖尿病による末梢神経障害も頭をよぎるが、検査所見や画像を考慮すると脊髄障害が生じていると分かる。特に、腱反射の亢進とBabinski徴候陽性、(本症例では認めないが)膀胱直腸障害という所見は脊髄障害に特徴的である。診断にかんしては画像から明らかで、後縦靭帯の骨化像が確認されるため後縦靭帯骨化症である。さらに、上腕二頭筋以下すべて亢進なので障害レベルはC5,6である。
a 正しい。基本は保存療法であり、頸椎カラーを装用し安静を保つ。
b 治療は安静である。巧緻運動障害のリハビリとして作業療法が行われる可能性はあるも、「治療方針」と聞かれればaに軍配が上がる。
c 放射線治療が有効な悪性腫瘍ではない。
d 嚥下機能障害があれば考慮すべきであるが、現時点で症状がないため食事形態の制限はない。
e 椎間板ヘルニアや脊柱菅狭窄症で適応となる。
※出題時bやcを選択した受験生が多く、正答率は非常に低かった。初見で「安静」を選ぶのは確かに難しいだろう。難問。

正答率:76%

テーマ:後縦靱帯骨化症〈OPLL〉の治療方針

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