103I67

45歳の男性。全身倦怠感と頭痛とを主訴に来院した。1か月前から全身倦怠感があり、徐々に増悪してきた。2日前から頭痛が出現した。食欲は良好。下痢と嘔吐とはない。意識は清明。身長162cm、体重58kg。体温36.1℃。脈拍72/分、整。血圧126/80mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。下腿に浮腫を認めない。尿所見:浸透圧420mOsm/kg(基準50~1,300)、蛋白(-)、糖(-)、Na排泄量43mEq/日(基準220以下)。血液所見:赤血球400万、Hb 12.2g/dL、Ht 38%、白血球6,200、血小板23万。血液生化学所見:空腹時血糖124mg/dL、総蛋白7.2 g/dL、クレアチニン0.3mg/dL、AST 20U/L、ALT 32U/L、LD 230U/L(基準176~353)、ALP 220U/L(基準115~359)、Na 118mEq/L、K 4.3mEq/L、Cl 82mEq/L、Ca 9.2mg/dL、P 3.0mg/dL、TSH 2.4μU/mL(基準0.2~4.0)、ACTH 62pg/mL(基準60以下)、FT3 3.2pg/mL(基準2.5~4.5)、FT4 1.6ng/dL(基準0.8~2.2)、コルチゾール8.5μg/dL(基準5.2~12.6)、血漿レニン活性〈PRA〉1.5ng/mL/時間(基準1.2~2.5)。血漿浸透圧258mOsm/kg(基準275~290)、抗利尿ホルモン〈バソプレシン〉1.2pg/mL(基準0.3~3.5)。
対応として適切なのはどれか。
水分摂取制限
副腎皮質ステロイド投与
3 %食塩液点滴静注
マニトール点滴静注
デスモプレシン〈DDAVP〉点鼻

解答: a

103I67の解説

難問。まずは本文をザッと読み、異常値を洗い出そう。Na118mEq/lが目に飛び込んでくるはずだ。低ナトリウム血症による全身倦怠感と頭痛である。ここまでの低ナトリウム血症であれば、当然ながら尿は希釈させ、体内にナトリウムを保持しようというのが人体の代償である。が、尿浸透圧420mOsm/kg、Na排泄量43mEq/日と依然捨て続けている(与えられた基準値内には入っているが、それでもこれだけ出ているのは問題なのだ。基準値と照らし合わせて機械的に判断してしまった者は要注意)。また、抗利尿ホルモン〈バソプレシン〉も1.2pg/mlと基準値内にあるのは異常(健常人でこれほどの低ナトリウム血症を呈したら本来は測定感度以下まで下がっていなくてはいけないためだ)。以上より、ADH不適合分泌症候群〈SIADH〉と判定できる。
a 正しい。SIADHの第一選択となる治療は水分摂取制限である。
b 自己免疫疾患ではないため、副腎皮質ステロイド投与は行わない。
c 3%食塩液点滴静注はフロセミドとセットで行う。
d マニトール点滴静注は脳浮腫の存在下で行う。
e デスモプレシン〈DDAVP〉点鼻は中枢性尿崩症に行う。本患者では逆効果であるため禁忌。
※基準値内にあるのが実は異常、というひねくれた問題。「なんとなく」で解けた者も多いようだが、上記議論は自身で踏襲できるようにしておこう。

正答率:72%

テーマ:ADH不適合分泌症候群〈SIADH〉への対応

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