調べ物時に穂澄が実践している "3分ルール"

本日は調べ物のお話。
インターネットが普及し、今や99%の医学的知識がオンラインで手に入ります。
(新幹線の乗り換えなどでたまたま出くわした場合を除き、)リアル書店に足を運ぶことも個人的になくなっています。
さて、ここでは医学部生が様々な場面で時間を浪費しがちな調べ物学習について、私自身の意見をお話したいと思います。日頃の学習の参考にして下さい。

【最重要】スタンス①:調べ物に費やす時間は無駄である

まず、調べ物をする時間は無駄な時間だ、という認識を持つとよいでしょう。
もちろん何時間も同じテーマについて調べ続けると自然に覚えてしまうこともあります。しかし、究極的に同一事項を覚えるために本当にそれだけの時間が必要だったのか、と言われるとそうではないでしょう。調べ物を3時間してやっと1つの事項を覚えたとしても、その事項は調べずにはじめから答えを暗記する作業に徹していたら10分で終了したかもしれません(絶対に3時間も暗記にはかからなかったはずです)。

調べ物に費やした時間は、その分を他の事項の暗記に使ったり、問題演習を行ったりしていればより効率的に活用できたはずなのです。
つまりは、なるべく調べ物に費やす時間を減らし、実際の暗記・演習作業に多くの時間を割くことが成績アップには欠かせません
ゆえに「いかに調べ物の時間を減らすか」が最大のテーマとなります。

スタンス②:すべての知識はオンラインで入手できる

未だに一部の学会はガイドラインを有料で書籍の形で販売していたりします。個人的に時代遅れもよいところだと思うのですが、そういう例外を除き、現在はガイドラインから病態生理の知識からほぼすべての情報がオンラインで手に入ります(しかも大半は無料です)。

ではここで疑問が生じます。それは「オンラインで手に入らない情報はあるのか?」です。10年前なら答えはYESでした。しかし、現代はネット上の情報量が非常に充実しているため、NOと言えます。求めている情報のうち、99%はネットで入手可能と思ってよいでしょう。
※超厳密に言えば、残りの1%はオンラインで入手できないことになりますが、そんな小さな割合について議論しても不毛です。ここでは実質100%と近似したいと思います。
※上記、書籍の形で販売されている学会ガイドラインだったとしても、オンライン版が販売されていたり、製薬会社等がそのガイドラインをまとめた記事を無料で公開してくれていたり、ブログやSNSでガイドライン内容についてつぶやいている方がいたりするため、実質的にほぼすべてが入手可能です。ただし、著作権に違反するような不法・不正アップロードされた文献を利用してはいけません。また、市販の書籍や予備校テキストを写真に撮影してSNS等で大々的に共有するのも控えるべきです。

よって、もしあなたの必要な情報が調べても見つからなかったとします。が、見つからないのはあなたの調べ方が悪いせいなんです。ネット上に載っていないからではない。ですので、重要なのは自分自身の検索能力を高めることです。medu4でもスタッフやアルバイトの方に調べ物をお願いすることがありますが、「いくら調べても見つかりませんでした、これはきっとそんな情報がオンラインには無いためだと思います」といった報告をされると正直少し萎えます。貴重な時間を費やした挙げ句、何の成果も得られなかった上、それをネットのせいにするのはセンスがありません。そういうケースでは下記の3分ルールを教え、調べ物作業中にも適宜報告をしてもらうようにお願いしています。「本当は記載があるはずなんだけど、自分の調べ方が悪いせいで見つからない、悔しいなぁ」、「どういうワードや条件で検索すれば見つかるんだろうか? 検索がうまい人に聞いて学ぼう!」というのがあるべき姿勢です。

スタンス③:無駄に時間を消耗しないための3分ルール

ここまでのお話をまとめます。

・日頃の学習をしていてほしいなと思う情報は必ずネットで調べることができる。
・調べても見つからない場合は自分の検索能力やかけた時間が足りないため。
・検索能力の長けた人がしっかりと時間を使えば必ず情報は手に入る。

となります。(別に自慢するわけでもなんでもないですが)例えば私、穂澄が何か医学的な情報を調べたいと思ったとします。時間さえかければ(3時間かけてよいなら)、必ずその情報を自分の満足行く形でネットから抽出できる自信があります。ですが、私も多忙です。そのたった1つの情報を拾い上げるために、1日24時間しかない貴重な時間のうち3時間を捻出してよいのか、という議論になります。

これをお読みのみなさんも同じでしょう。あなたも私も1日24時間。調べ物などしている時間はもったいないです。もっと言えば、医学の勉強には覚えるべき事象が無数にあり、一生を費やしても覚えきれません。調べ物によってそのうちの1つの情報を得られたとしても(その場では満足行くかもしれませんが)、その間に貪欲に暗記したり演習したりしているライバルの学習効率には遠く及ばないでしょう。究極、その情報を捨てたとしても(知識がボヤーッとしていて気持ち悪いかもしれませんが無視して先へ進んでも)、進級試験やCBT・国試で不合格になったりすることはありません。

お待たせしました、そこで登場するのが3分ルールです。私は「なにか調べたいな」と思ったときにインターネットで3分間だけ調べることにしています(ストップウォッチ等で測定するのは面倒なので、だいたい3分です)。体感、この3分間で欲しい情報が見つかることが8割程度です。ネット検索が不得意な人は5割しか見つからないかもしれません。が、無尽蔵な時間を費やしてダラダラ調べるより、3分という制限時間を常に自分に課したほうが検索スキルが上昇しやすいです。調べ始めてから3分経ったタイミングで以下を評価します。

・あとどのくらいの時間をかければほしい事実が見つかりそうか?
・ほしい知識は果たしてそれだけの時間を費やす価値のあるものなのか?
・その事実がもっと容易に手に入る裏技はないか?

の3つです。まったく調べ始めていない状態よりも、3分間調べてみた後の方が「あとどのくらい調べるのに時間がかかりそうなのだろう?」というのは見積もりやすいです。「あと10分くらいで出てきそう」かつ「この知識があったら勉強が捗るな」と思えるのであれば検索を続行すればよいですし、「これはあと1時間くらいかかっちゃうかもな」かつ「SNS等でざっとみてみてもこの情報をそもそも欲している人がいない(=重要性が低そうだ)な」と判断できたのであれば検索を中止してその知識を諦めればよいです。端的に言ってしまうと、3分以上調べても見つからないような知識は正直どうでもいいことが多い。自分だけが気になっている事実だったり、専門家の間でも意見が分かれるところだったり、試験に全く出ないところだったり。

あとは裏技ですね。これについては下の④で示します。

スタンス④:ここぞというタイミングで裏技を使う

繰り返しになりますが、みなさんが勉強をしている中で生じた疑問の99%以上はネットで調べれば自己解決します。どこか特定の出版社が出している書籍を読まないと絶対的に得られない情報など現代にはありえません。誰であってもすべての情報が手に入る時代です。ですが、検索スキルが高くない場合には欲しい情報が見つからないこともありますし、調べる対象によっては検索のうまい人であっても膨大な時間を要することがあります。

欲しい情報を得る方法はネット検索以外にも多数あります。しかし、お金がかかったりだとか、他の人を煩わせたりだとかしてしまうため、常日頃から使うわけにはいきません。自分一人では調べるのが本当に難しい、かつ、絶対何があってもその情報がほしい、というときに限定して使うべきものが裏技です。

一番手っ取り早い裏技は友人や先輩、大学の先生に聞くことです。しかしながら、例えば同級生に質問しても、自分で3分調べてわからなかったものがすぐに解決する可能性は低いでしょう。臨床で活躍されている先輩医師や、専門医の先生であればおそらく確実に回答してくださると思いますが、お忙しい先生方にわざわざ質問回答してもらうのはなかなか憚られるものです。学内講義や病棟実習の後に1回だけ聞く、などならまだしも、常習的に質問をし続けるのは困難です。

全員が使えるオプションではないかもしれませんが、人に調べてもらう、という裏技もあります。たとえば私はmedu4のテキスト編纂等で膨大な情報を調べる必要が発生しますが、全部一人で調べ上げていたら全講座の作成が間に合いませんので、スタッフに調べてもらっています。これはいささか特殊な事情だったかもしれませんが、医学部生であれば勉強会内などで、手分けして調べるのは有効そうですね。また、本当に時間のない試験直前に必要が発生したら、緊急事態として家族や兄弟に調べてもらう、というのもありかもしれません。

各種オンラインサイトの会員資格購入やガイドライン類の購入という手段もあります。最新の医療情報についてアップデートをしてくれる企業のサイトには会員登録制(一部有料)のものがあったり、学会のガイドラインも書籍等の形で有料のものがあります。ネットで色々検索しても断片的な情報は無料で手に入りますが、包括的に情報を得たい場合はこれらのサービスにお金を払うのも手です。しかし、特に学会ガイドラインは丸々入手したところで情報過多すぎて、一般の医学部生の立場からは使いこなせないことが多いかもしれませんから注意が必要です。市販の参考書や予備校講座のような、CBTや国試で出題されるところだけを絞って覚えやすい形で編纂してくれているサービスを使ったほうが結局早いし安上がりです。

有料で医学の質問に回答してくれるサービスもあります。有名なのが各予備校が実施している個別指導ですね。一般に高額の費用がかかりますが、疑問点や質問点についてはストレスなく担当講師が解決してくれるものと思います。medu4では実施していませんが、有料でメール質問対応を行っている企業もあるようです。各人の懐具合と相談して、利用の有無を決めればよいと思います。私は国公立学校出身で家庭がそこまで裕福な方ではありませんでしたので、かつてはお金を使うことは悪、のように思っていました。でも、ここぞというタイミングでお金を使って時間節約するのは非常に有効だと今は思い直しています。そもそも我々は日々、スーパーやデパートで食材やら衣類を購入しているわけです。全部自給自足すればお金を払わなくてよいわけですが、農業をしたり、衣類を作ったりする時間や手間を節約するためにお金で解決しています。それと同じ原理であって、知識にお金を払うのは決して無駄遣いではありません

medu4ではそもそも質問の発生が極端に減るよう映像講義を設計しています。また、フォーラムを用意して、学生の方々からの質問対応をしています。最近はだいぶ減ってきましたが、かつては映像講義は有料なので利用せず、無料機能のフォーラムだけ利用される方が散見されました。そのような利用方法も全然構いません。が、結局そのような方からいただく質問の大部分は私が講義内で先手を打って解説済みの事項だったりします。「きっとこの人、たくさん時間をかけて悩んだり調べたりしてるんだろうなぁ。1〜2回のランチ程度の金額を払って僕の講義をみればそれで一瞬なのになぁ」といつも思います。もちろん各人のスタンスがあると思いますので「絶対に講義を買え!」とか「講義を買ってないやつの質問には答えない!」などとは言いませんが、「使う時間はそこじゃないんじゃない?」と内心では思ったりしています。

勉強に限らず、時間をお金で買うというオプションは医学部生全員に持ってほしいと思います(学生時代の私自身にも口を酸っぱくして言いたいです)。もちろん何でもかんでも金で解決しろ、と言うわけではありません。ここぞというタイミングで先行投資の一環としてお金をつかうのです。医師になった後は時給1万円以上の世界が待っています。社会に出て忙しくなったり、歳をとったりしてしまうとできなくなってしまうことは非常に多くあります。学生時代の貴重な時間の有効活用法を各自検討してみて下さい。