118F67

次の文を読み、以下の問いに答えよ。
80歳の男性。発熱と排尿困難を主訴に来院した。
現病歴:3日前から排尿困難を自覚していた。本日から悪寒戦慄を伴う発熱が出現したため救急外来を受診した。
既往歴:高血圧症、糖尿病、脂質異常症、うつ病および蕁麻疹に対してアンジオテンシン変換酵素〈ACE〉阻害薬、DPP-4阻害薬、スタチン、三環系抗うつ薬およびヒスタミンH1受容体拮抗薬を内服している。
生活歴:65歳までは会社員で、現在は無職である。一人暮らし。喫煙は70歳まで10本/日を50年間、飲酒は機会飲酒。ネコを飼育している。
家族歴:父が脳梗塞、母が糖尿病。
現 症:意識は清明。身長170cm、体重72kg。体温38.8℃。脈拍112/分、整。血圧136/60mmHg。呼吸数26/分。SpO2 98%(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。甲状腺腫と頸部リンパ節とを触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。下腹部が膨隆しているが、圧痛を認めない。肝・脾は触知しない。左の肋骨脊柱角に叩打痛を認める。直腸指診で4cm大の前立腺を触知し、圧痛を認めない。
検査所見:尿所見:蛋白1+、糖1+、潜血(-)、沈渣に赤血球1~4/HPF、白血球100以上/HPFを認める。血液所見:赤血球461万、Hb 14.9g/dL、Ht 44%、白血球14,300(桿状核好中球2%、分葉核好中球90%、好酸球1%、好塩基球1%、単球3%、リンパ球3%)、血小板12万、PT-INR 1.18(基準0.9~1.1)。血液生化学所見:総蛋白6.6g/dL、アルブミン3.9g/dL、総ビリルビン1.5mg/dL、直接ビリルビン0.4mg/dL、AST 13U/L、ALT 15U/L、LD 219U/L(基準124~222)、ALP 79U/L(基準38~113)、γ-GT 30U/L(基準13~64)、CK 76U/L(基準59~248)、尿素窒素26mg/dL、クレアチニン1.3mg/dL、尿酸4.7mg/dL、血糖120mg/dL、HbA1c 7.0%(基準4.9~6.0)、総コレステロール197mg/dL、トリグリセリド226mg/dL、HDLコレステロール69mg/dL、LDLコレステロール83mg/dL、Na 138mEq/L、K 4.5mEq/L、Cl 105mEq/L。CRP 14mg/dL。胸部エックス線写真で心胸郭比51%、両側肺野に浸潤影を認めない。腹部超音波検査で膀胱内に大量の尿が貯留している所見を認めるが水腎症は認めない。
この患者の排尿困難との関連が疑われる薬剤はどれか。2つ選べ
アンジオテンシン変換酵素〈ACE〉阻害薬
DPP-4阻害薬
スタチン
三環系抗うつ薬
ヒスタミンH1受容体拮抗薬

解答: d,e

118F67の解説

【ポイント】
高齢男性の発熱と排尿困難。左の肋骨脊柱角に叩打痛を認め、尿沈渣にて膿尿(白血球100以上/HPF)がみられる。白血球上昇(好中球優位)やCRP高値の存在と合わせ、腎盂腎炎と考えられる。「腹部超音波検査で膀胱内に大量の尿が貯留している」とのことで、尿閉がみられている(下腹部膨隆は尿が満ちた膀胱)。排尿困難の副作用をもつ薬剤を選択肢から選ぼう。

【選択肢考察】
a ACE阻害薬の副作用としては、空咳が有名。
b DPP-4阻害薬はスルホニル尿素薬など他血糖降下薬との併用にて、低血糖の副作用をみる。
c スタチン〈HMG-CoA還元酵素阻害薬〉の副作用としては、横紋筋融解症が有名。
d 正しい。三環系抗うつ薬には抗コリン作用があり、尿閉をきたす。
e 正しい。ヒスタミンH1受容体拮抗薬には抗コリン作用があり、尿閉をきたす。

正答率:85%

テーマ:排尿困難をきたす薬剤

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