118F42

2か月の女児。定期診察のため母親に連れられて来院した。新生児期に心室中隔欠損症と診断されている。活気はあるが、以前に比して体重の増加が鈍っていた。身長57.0cm、体重4,720g。体温36.7℃。脈拍148/分、整。血圧90/58mmHg。呼吸数52/分。毛細血管再充満時間1秒。SpO2 98%(room air)。季肋下に陥没呼吸を認める。心音はII音の亢進を認め、胸骨左縁下部にLevine 5/6の汎収縮期雑音、心尖部にLevine 2/6の拡張期雑音を認める。胸部聴診上、両側にwheezesを聴取する。右肋骨弓下に肝を3cm触れる。心エコー検査で、径8mmの心室中隔欠損孔を介する多量の左右短絡を認め、左心房と左心室は拡大している。左心室の収縮は保たれている。収縮期に心室中隔の左室側への圧排を認める。心室中隔欠損症による心不全徴候が明らかとなってきており、近日中に心室中隔欠損症の閉鎖手術が必要と判断した。
この患児に対する適切な初期対応はどれか。
酸素吸入
利尿薬の投与
β遮断薬の投与
アドレナリンの投与
肺血管拡張薬の投与

解答: b

118F42の解説

【ポイント】
新生児期に心室中隔欠損症〈VSD〉と診断されている乳児。胸骨左縁下部の汎収縮期雑音はVSDのシャント血流による雑音、心尖部の拡張期雑音はCarey-Coombs雑音であろう。陥没呼吸(呼吸不全徴候)、II音の亢進(肺高血圧の存在)、wheezes聴取(左心不全による肺うっ血)、肝腫大(右心不全徴候)など、病状の進行がみられる。

【選択肢考察】
a SpO2 98%(room air)とあり、酸素吸入は必要ない。
b 正しい。肺うっ血がみられており、利尿薬の投与により、除水を図る。
c 「左心室の収縮は保たれている」とあるため、β遮断薬の投与は必要ない。
d 「左心室の収縮は保たれている」とあるため、アドレナリンの投与は必要ない。
e 肺高血圧がみられているため、肺血管を拡張したらよいのではないか、と考えて本選択肢を選んだ者が約3割。気持ちはわかるのだが、実は病態は逆なのである。肺血管を拡張させることで、肺血流が増加する。これにより、VSDによる左→右シャントが増加し、肺うっ血が増悪、心不全症状に拍車をかけることとなってしまう。

正答率:38%

テーマ:心室中隔欠損症〈VSD〉閉鎖手術前の初期対応

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