118D69

62歳の男性。動悸と呼吸困難を主訴に来院した。以前の健診で心雑音を指摘されたが、自覚症状がないのでそのままにしていた。3か月前から動悸があり、最近は徐々に持続時間が長くなっている。自分で脈を触れたところ脈のリズムは不整だったという。1週間前から就寝時に息苦しさがあり不眠である。3日前からは体動時の息苦しさも出現している。2日前の動悸発作は約1時間持続していた。身長168cm、体重67kg。体温36.0℃。脈拍68/分、整。血圧120/68mmHg。呼吸数14/分。SpO2 97%(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音は心尖部を最強点とするLevine 3/6の汎収縮期雑音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。下腿浮腫を認めない。血液所見:赤血球411万、Hb 13.7g/dL、Ht 42%、白血球7,600、血小板24万。血液生化学所見:総蛋白6.9g/dL、AST 30U/L、ALT 22U/L、LD 201U/L(基準124~222)、尿素窒素18mg/dL、クレアチニン0.9mg/dL、Na 136mEq/L、K 3.7mEq/L、Cl 110mEq/L、TSH 0.2μU/mL(基準0.2~4.0)、FT4 1.0ng/dL(基準0.8~2.2)、脳性ナトリウム利尿ペプチド〈BNP〉408pg/mL(基準18.4以下)。CRP 0.1mg/dL。非発作時の心電図(A)、胸部エックス線写真(B)、心エコー検査の傍胸骨長軸像(C)及び心尖部四腔断層像(D)を別に示す。
この患者の病態で考えられるのはどれか。2つ選べ
肺炎
貧血
心不全
心房細動
甲状腺機能亢進症

解答: c,d

118D69の解説

【ポイント】
「自分で脈を触れたところ脈のリズムは不整だった」という記載から心房細動〈AF〉の存在が疑われる。AFは心臓(特に左房)に負荷がかかる病態で発生しやすいため、その原因を考えよう。「心尖部を最強点とする汎収縮期雑音」という記載と画像C, D(左室→左房への逆流が示されている)から僧帽弁閉鎖不全症〈MR〉の存在を同定する。MRによりAFが惹起された形が想定される。もちろん全体としては心不全を呈しており、それゆえの呼吸困難やBNP上昇などが与えられている形だ。画像A, Bは問題を解くうえでは直接関係しないが、一応解説しておく。Aの心電図ではV1, V2でP波の陰性化がみられ、左房負荷が示唆される。Bの胸部エックス線写真では心拡大を認める。

【選択肢考察】
a 胸部エックス線にて肺炎を疑う像は確認できない。また、発熱や炎症所見もなく、SpO2も正常。
b 「赤血球411万、Hb 13.7g/dL」より貧血は否定的。
c 正しい。上記の通り。
d 正しい。上記の通り。
e TSHもFT4も正常値であり、否定的。

正答率:97%

テーマ:心不全と心房細動〈AF〉の診断

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