118D63

7歳の男児。頻回の嘔吐と全身倦怠感を主訴に母親に連れられて来院した。新学期がはじまり、易疲労感を自覚し食欲が低下していた。昨晩に嘔吐し食事を摂取できていない。今朝から頻回の嘔吐があり、元気がなくなったため受診した。6歳から今回と同様の経過を数回繰り返し、1か月前に入院した病院で原因を精査したが、器質的異常は指摘されていない。意識は清明。顔面蒼白。身長121cm、体重21kg。体温36.3℃。脈拍124/分、整。血圧100/68mm/Hg。呼吸数30/分。SpO2 98%(room air)。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、腸蠕動音は減弱し、皮膚ツルゴールは低下している。尿所見:ケトン体3+。
この患者の静脈血ガス分析(room air)の所見はどれか。
pH 7.22、PCO2 35Torr、HCO3- 14mEq/L、Na 140mEq/L、K 4.3mEq/L、Cl 105mEq/L
pH 7.25、PCO2 40Torr、HCO3- 17mEq/L、Na 139mEq/L、K 4.3mEq/L、Cl 110mEq/L
pH 7.22、PCO2 76Torr、HCO3- 31mEq/L、Na 138mEq/L、K 4.3mEq/L、Cl 99mEq/L
pH 7.38、PCO2 42Torr、HCO3- 24mEq/L、Na 137mEq/L、K 3.8mEq/L、Cl 102mEq/L
pH 7.55、PCO2 41Torr、HCO3- 35mEq/L、Na 135mEq/L、K 3.0mEq/L、Cl 87mEq/L

解答: a

118D63の解説

【ポイント】
繰り返す嘔吐に加え、尿ケトン体3+を呈している。器質的異常は指摘されておらず、アセトン血性嘔吐症〈周期性嘔吐症〉を考えたい。新学期がはじまる、ということで感じたストレスが原因になっているものと推察する。本患者の静脈血ガス分析所見が問われているが、ケトン体の存在により代謝性アシドーシスとなる。ゆえにpHとHCO3-は低下。過換気(実際に呼吸数30/分と提示されている)で代償するため、PCO2も低下。この時点で残る選択肢は1つしかなく、NaとClを用いてアニオンギャップを計算すると140−105−14=21と開大がみられ、ケトン体という不揮発酸の存在に矛盾しない。なお、このパターンで昔から非常にいただく質問が「嘔吐により胃酸が体外へ過剰に放出されるので、代謝性アルカローシスを呈するのでは?」というものだ。むろん、局所的にみればそのようなベクトルも働いているだろう。が、血中で増えたケトン体の作用の方が強い。ゆえに全体としては代謝性アシドーシスとなる。肥厚性幽門狭窄症(噴水状嘔吐が有名で代謝性アルカローシスを呈することが多い)とは区別して考えてほしい。同様に「嘔吐により胃酸(HCl)を喪失するので、低Cl血症を呈するのでは?」と考えてしまうと、Cl 87mEq/Lに飛びついてしまうこととなる。結論、本問を解く上では嘔吐について考えない方がうまくいく。

正答率:45%

テーマ:アセトン血性嘔吐症〈周期性嘔吐症〉の静脈血ガス分析所見

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