118D62

67歳の女性。発熱と腹痛を主訴に転院した。4週間前から重症急性膵炎の診断で自宅近くの病院に入院していた。絶食、大量輸液および蛋白分解酵素阻害薬の治療により改善したが、5日前から発熱と腹痛が出現し、抗菌薬投与で改善しないため転院した。意識は清明。体温37.6℃。心拍数84/分、整。血圧128/80mmHg。呼吸数18/分。SpO2 98%(room air)。心窩部に圧痛を認めるが反跳痛や筋性防御を認めない。血液所見:赤血球430万、Hb 11.9g/dL、Ht 35%、白血球11,100、血小板25万。血液生化学所見:アルブミン2.9g/dL、AST 27U/L、ALT 17U/L、LD 220U/L(基準124~222)、アミラーゼ58U/L(基準44~132)、尿素窒素10mg/dL、クレアチニン0.5mg/dL。CRP 17mg/dL。腹部造影CTを別に示す。
診断はどれか。
慢性膵炎
膵仮性嚢胞
膵・胆管合流異常症
被包化膵臓壊死〈WON〉
膵管内乳頭粘液性腫瘍〈IPMN〉

解答: d

118D62の解説

【ポイント】
4週間前ころに重症急性膵炎と診断されていた高齢女性に、5日前から発熱と腹痛が出現している。血液検査ではアミラーゼが正常値となっており、急性膵炎自体の増悪や再発ではなさそうだ(別の病態や合併症か?)。ほか、白血球数やCRPが上昇しているといった非特異的な炎症所見しか手がかりがないため、画像を確認する運びとなる。腹部造影CTでは膵と思しき領域が広がっており、外側に被膜を認める。内部構造は造影効果に乏しく、比較的均一な低吸収域となっている。急性膵炎によって壊死した組織が被包化され、融解・液状化したものである。「急性膵炎発症4週以降」「被包化(被膜の存在)」ときたら、被包化膵壊死〈WON〉を想起したい。急性膵炎の合併症の1つである。

【選択肢考察】
a 急性膵炎から4週程度で移行する病態ではない。また、膵石や膵管の数珠状拡張といった特徴的な画像所見もみられていない。
b 急性膵炎の合併症の1つではあるが、境界明瞭な単房性の嚢胞として描出される。本症例のように膵全体にわたって存在する性質のものではない。
c 先天性の病態であり、急性膵炎後に発症するものではない。
d 正しい。上記の通り。
e 膵頭部にぶどう房状の多房性嚢胞がみられる。

正答率:86%

テーマ:被包化膵臓壊死〈WON〉の診断

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