118D49

28歳の女性(0妊0産)。胚移植施行後翌日に腹痛と呼吸困難を主訴に来院した。1年前から多嚢胞性卵巣症候群と診断され、不妊治療を受けていた。排卵誘発薬を用いた体外受精・胚移植を受けた。身長170cm、体重71kg。体温36.6℃。脈拍76/分、整。血圧102/60mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は膨満。内診で両側付属器の腫大を触知する。血液所見:赤血球490万、Hb 16.6g/dL、Ht 52%、白血球14,000、血小板26万。血液生化学所見:総蛋白6.8g/dL、アルブミン3.9g/dL、AST 30U/L、ALT 24U/L、BUN 12mg/dL、クレアチニン0.7mg/dL、Na 142mEq/L、K 3.2mEq/L、Cl 98mEq/L。腹部超音波像を別に示す。
まず行う治療はどれか。
輸液
血漿交換
抗菌薬投与
付属器摘出術
アルブミン製剤投与

解答: a

118D49の解説

【ポイント】
排卵誘発薬を用いた体外受精・胚移植後に腹痛と呼吸困難がみられている。腹部が膨満しているのは腹水貯留のためであろう。腹部超音波像では腫大した卵巣と大量の腹水貯留を指摘可能。卵巣過剰刺激症候群〈OHSS〉の診断。

【選択肢考察】
a 正しい。OHSSでは血管透過性が亢進し、血管外へ水分が移動し、循環血液量が減少する。同時に血液濃縮が起こり、血栓症のリスクともなる。ゆえに輸液で循環血液量を補い、血液を希釈させることが治療となる。症例で提示された血圧が102/60mmHgであり、いささか自信をもって選ぶことが難しい選択肢だったかもしれない。102C24 のように血圧90/48mmHg程度で出題してくれていれば、正答率はもっと上がったはず。が、104I77 では血圧提示がそもそも無い状態で輸液が正解となっていたり、117D20 でも血圧は104/56mmHgで提示されていたり、とOHSS症例における血圧についてはあまり深く考えないほうがよいのかもしれない。
b そもそもOHSSの治療ではない。
c 細菌感染ではないため、使用しない。
d 腫大した卵巣が茎捻転を起こした場合に考慮される。
e 「血圧102/60mmHgに輸液は不要かな?」と考えてしまうと、消去法的にこの選択肢を選ばざるを得なくなる。が、本患者におけるアルブミン値は3.9g/dLと軽度低下しているに過ぎない。もっと言えば、総蛋白は6.8g/dLと基準値内を保っている。「まず行う治療」という設問誘導からも輸液に軍配が上がると判断しよう。

正答率:90%

テーマ:卵巣過剰刺激症候群〈OHSS〉にまず行う治療

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