118D46

65歳の男性。定期受診で来院した。自宅近くの診療所を糖尿病と高血圧症で通院し、ビグアナイド薬、DPP-4阻害薬およびアンジオテンシン受容体拮抗薬が処方されている。自覚症状はない。喫煙歴と飲酒歴はない。運動に毎日7,000歩を歩いている。身長164cm、体重60kg。脈拍72/分、整。血圧118/72mmHg。家庭血圧120台/70台。胸部と腹部とに異常を認めない。アキレス腱反射は両側で消失している。尿所見:蛋白3+、潜血(-)、沈渣に赤血球1〜2/HPF、白血球0〜1/HPF、円柱はない。随時尿の尿蛋白500mg/dL、尿クレアチニン250mg/dL。血液所見:赤血球300万、Hb 10.0g/dL、Ht 33%、白血球6,200、血小板31万。血液生化学所見:尿素窒素25mg/dL、クレアチニン1.2mg/dL、eGFR 48.0mL/分/1.73m2、尿酸6.0mg/dL、血糖120mg/dL、HbA1c 7.2%(基準4.9〜6.0)、Na 142mEq/L、K 5.0mEq/L、Cl 108mEq/L。
この患者の腎機能低下を抑制するために追加する薬剤はどれか。
尿酸降下薬
SGLT2阻害薬
カルシウム拮抗薬
スルホニル尿素薬
陽イオン交換樹脂製剤

解答: b

118D46の解説

【ポイント】
糖尿病と高血圧症で通院中の高齢男性。アキレス腱反射の両側消失は糖尿病性ニューロパチーによるものであろう。随時尿の尿蛋白÷尿クレアチニン=2g/gCrとなり、慢性腎臓病〈CKD〉の重症度分類における尿蛋白区分はA3(尿蛋白/Cr比が0.5以上)と分かる。eGFR 48.0mL/分/1.73m2より、GFR区分はG3a。CKDの重症度分類においてはリスクが最も高い分類(赤色;白黒テキストでは色が最も濃い黒色)に位置づけられる。

【選択肢考察】
a 尿酸値は6.0mg/dLと基準値内。
b 正しい。SGLT2阻害薬には腎機能障害の進行を抑制する作用があるため、CKDに対して用いられる。
c 血圧は118/72mmHgと問題ない。
d 血糖120mg/dL、HbA1c 7.2%とコントロールが良好とは言い難い。が、スルホニル尿素薬の副作用として有名な低血糖は腎機能低下者において出現しやすいことが知られている。さらには本患者はすでにDPP-4阻害薬を服用中であるため、スルホニル尿素薬との相乗効果で低血糖を惹起しやすい。ゆえにスルホニル尿素薬は使いにくい。
e 高カリウム血症に有効だが、K 5.0mEq/Lと微妙に上昇しているにすぎない本患者に対し、敢えて用いるものではない。

正答率:70%

テーマ:腎機能低下を抑制するために追加する薬剤

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