118D42

3歳の男児。呼吸困難を主訴に母親に連れられて来院した。1週間前から夜間の咳嗽が出現し、昨夜から呼吸困難が出現したため救急外来を受診した。意識は清明。身長92cm、体重13kg。体温37.2℃。座位で脈拍120/分、整。血圧110/78mmHg。呼吸数36/分。SpO2 96%(room air)。両側鎖骨上窩に径2cmの腫瘤を触知する。心音は異常なく、胸部にstridorを聴取する。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。血液所見:赤血球450万、Hb 12.1g/dL、Ht 38%、白血球20,000(芽球14%、好中球27%、好酸球3%、単球6%、リンパ球50%)、血小板35万。胸部エックス線写真で縦隔に大きな腫瘤陰影を認める。仰臥位で呼吸困難とチアノーゼが急速に出現し、SpO2は74%に低下した。座位に戻しマスク10L/分の酸素投与でSpO2は98%に改善し、呼吸困難は軽減した。
適切な対応はどれか。
開胸手術
気管挿管
胸腔穿刺
気管支拡張薬吸入
座位の励行を指示して帰宅

解答: b

118D42の解説

【ポイント】
3歳児に呼吸困難がみられている。ポイントは「胸部エックス線写真で縦隔に大きな腫瘤陰影を認める」というところである。胸部にstridorを聴取していることから、この縦隔腫瘍により気道が圧排されている危険な状況である。なお「両側鎖骨上窩に径2cmの腫瘤を触知する」とあるのは縦隔腫瘍が広がっている可能性と、リンパ節を首座とする腫瘍である可能性、あるいはリンパ節転移している可能性、の3つがある。記載の情報だけからは確実なことは言えないのだが、一元的に説明するには縦隔腫瘍の正体が悪性リンパ腫と考えると分かりやすい。お手持ちの呼吸器テキスト類の「縦隔腫瘍」という項目を今一度振り返ってほしい。縦隔腫瘍となりうる顔ぶれの1つに悪性リンパ腫も記載されているはずだ。

【選択肢考察】
a 「仰臥位で呼吸困難とチアノーゼが急速に出現」とあるため、開胸手術が必要だとしても、気道確保無しには実施できない。
b 正しい。圧排されている気道を開通させるべく、気管挿管を行う。
c 胸水貯留時や気胸の存在下に有効。
d 縦隔腫瘍により物理的に気道が圧排されているため、気管支拡張薬の吸入では開通が期待できない。
e 呼吸困難がみられている3歳児に対し、根本的な対処もせず帰宅させるのは危険極まりない(★禁忌★)。

正答率:33%

テーマ:縦隔腫瘍により仰臥位での呼吸困難をみる児への対応

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