118D31

36歳の男性。動悸を主訴に来院した。10年前から労作時の動悸と気が遠くなる感じの発作を自覚していた。中学生の時から健診で心電図異常を指摘されているが経過観察となっていた。最近、母方の従兄弟が25歳で突然死したため心配になり受診した。母方の叔母は心疾患で通院中(詳細不明)。意識は清明。身長168cm、体重70kg。体温36.5℃。脈拍72/分、整。血圧124/72mmHg。頸静脈の怒張を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。四肢に浮腫を認めない。血液検査では、BNP 178pg/mL(基準18.4以下)以外異常を認めない。12誘導心電図(A)を別に示す。胸部エックス線写真で心胸郭比45%、肺うっ血と胸水貯留を認めない。心エコー図(B)を別に示す。左室心室中隔壁厚22.5mm、後壁厚8.6mm、拡張期径38.0mm、左室駆出率79.6%であり、有意な弁膜症や左室流出路の圧較差を認めなかった。Holter心電図で非持続性心室頻拍を数回認め、ふらつきを自覚していた。心臓カテーテル検査で冠動脈に狭窄病変を認めない。心臓造影MRIで中隔の心筋中層に遅延造影を認めた。
突然死を予防する治療法はどれか。
ジゴキシン投与
ジソピラミド投与
ループ利尿薬投与
恒久的ペースメーカ植込み術
植込み型除細動器〈ICD〉植込み術

解答: e

118D31の解説

【ポイント】
中学生の時から健診で心電図異常を指摘されていること、母方の従兄弟が25歳で突然死したこと、などから遺伝性の心疾患を疑う。左室心室中隔壁厚22.5mm、後壁厚8.6mmと明らかに厚さが違う(いわゆる「心室中隔の非対称性肥厚〈ASH〉」がみられている)ことから、肥大型心筋症を考える。「心臓造影MRIで中隔の心筋中層に遅延造影」も心室中隔に変性がみられていることを意味する。12誘導心電図(A)ではI, aVL, V4〜V6に陰性T波を、心エコー図(B)ではやはりASHを、それぞれ指摘可能。

【選択肢考察】
a ジゴキシンは強心薬や頻脈性疾患に対して心拍数を低減させる薬として使われる。
b Ia群の抗不整脈薬である。
c 体内に水分貯留した際の除水に有効。
d ペースメーカは徐脈性疾患に有効。
e 正しい。心室頻拍〈VT〉や心室細動〈VF〉が出現した際に除細動が行われることで、突然死を予防することができる。

正答率:90%

テーマ:非持続性心室頻拍〈VT〉に対して突然死を予防する治療法

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