118D19

73歳の女性。筋力低下と嚥下困難を主訴に来院した。2か月前から階段昇降が困難になり、1か月前から布団の上げ下ろしができなくなった。2週間前から上眼瞼の浮腫および全身の紅斑が出現し、7日前からむせのため食事摂取が困難になったため受診した。意識は清明。身長154cm、体重40kg。体温37.5℃。脈拍96/分、整。血圧134/70mmHg。呼吸数16/分。SpO2 97%(room air)。上眼瞼に淡い浮腫性紅斑および両手指の関節背面に紅色丘疹を認める。両耳介、前頸部、背部、上肢伸側および臀部外側に紅斑を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。表在リンパ節腫大を認めない。四肢近位筋に対称性筋力低下を認める。四肢に感覚異常を認めない。尿所見に異常を認めない。血液所見:赤血球372万、Hb 11.3g/dL、Ht 33%、白血球5,900(好中球75%、好酸球1%、単球12%、リンパ球12%)、血小板26万。血液生化学所見:総蛋白5.6g/dL、アルブミン3.0g/dL、AST 108U/L、ALT 79U/L、LD 628U/L(基準124〜222)、γ-GT 30U/L(基準9〜32)、CK 1,620U/L(基準41〜153)、尿素窒素12mg/dL、クレアチニン0.4mg/dL、血糖111mg/dL、TSH 3.8μU/mL(基準0.2〜4.0)、FT3 2.7pg/mL(基準2.3〜4.3)、FT4 1.1ng/dL(基準0.8〜2.2)。免疫血清学所見:CRP 0.8mg/dL、抗TIF1-γ抗体陽性。胸部エックス線写真に異常を認めない。
この患者で最も注意すべき合併症はどれか。
肝不全
悪性腫瘍
間質性肺炎
急性腎障害
膀胱直腸障害

解答: b

118D19の解説

【ポイント】
高齢女性の筋力低下と嚥下困難。上眼瞼の浮腫性紅斑はヘリオトロープ疹であろう。抗TIF1-γ抗体陽性と合わせ、皮膚筋炎の診断となる。

【選択肢考察】
a 皮膚筋炎に肝不全は合併しにくい。
b 正しい。抗TIF1-γ抗体陽性の皮膚筋炎では悪性腫瘍の合併がみられやすい。
c 間質性肺炎を合併しやすいのは抗MDA5抗体陽性例。
d 皮膚筋炎には腎障害を合併しにくい。
e 糖尿病性ニューロパチーなどでみられる。皮膚筋炎は文字通り筋肉の疾患であるため、神経系は保たれる。

正答率:96%

テーマ:抗TIF1-γ抗体陽性の皮膚筋炎患者で最も注意すべき合併症

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