118C66

次の文を読み、以下の問いに答えよ。
61歳の男性。交通外傷のため救急車で搬入された。
現病歴:乗用車で走行中に塀に衝突し腹部を強打し動けない状態だった。シートベルトを装着しておりエアバッグが作動していた。目撃者が救急車を要請した。
既往歴:虚血性心疾患で抗血小板薬を服用している。
生活歴:飲酒は機会飲酒。
家族歴:父と兄が高血圧症で治療中である。
現 症:意識は清明。身長162cm、体重54kg。体温37.0℃。心拍数112/分、整。血圧80/44mmHg。呼吸数26/分。SpO2 98%(リザーバー付マスク10L/分 酸素投与下)。皮膚は四肢に冷汗と湿潤を認める。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。口腔内は乾燥している。頸静脈の怒張を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は膨満しており、肝・脾を触知しない。腸雑音は減弱している。
検査所見:血液所見:赤血球410万、Hb 10.1g/dL、Ht 40%、白血球10,300(好中球75%、好酸球1%、好塩基球1%、単球6%、リンパ球17%)、血小板32万。血液生化学所見:総蛋白7.2g/dL、アルブミン4.0g/dL、総ビリルビン0.9mg/dL、直接ビリルビン0.2mg/dL、AST 65U/L、ALT 34U/L、LD 177U/L(基準124~222)、ALP 55U/L(基準38~113)、γ-GT 32U/L(基準13~64)、アミラーゼ130U/L(基準44~132)、CK 382U/L(基準59~248)、尿素窒素22mg/dL、クレアチニン0.6mg/dL、尿酸6.2mg/dL、血糖228mg/dL、HbA1c 5.8%(基準4.9~6.0)、Na 142mEq/L、K 4.4mEq/L、Cl 97mEq/L。
この時点での適切な対応はどれか。2つ選べ
血小板輸血を行う。
鎮静薬を静脈内投与する。
乳酸リンゲル液を急速投与する。
体位を逆Trendelenburg位にする。
迅速簡易超音波検査〈FAST〉を行う。

解答: c,e

118C66の解説

【ポイント】
交通外傷。抗血小板薬を服用であったとのことで、大量出血が予想される。実際、血圧80/44mmHgとショック状態に至っており、細胞外液の補充が急がれる。また、「腹部は膨満」「腸雑音は減弱」といった腹部損傷を示唆する所見の記載があるも、具体的にどの臓器が傷害されているか、等の細かい内容が不明であるため、画像検査で確認したい。

【選択肢考察】
a 血小板は32万と十分だ。
b 大量出血によりショック状態となっている。現時点では幸いながら「意識は清明」とあるが、いつ意識障害がみられてもおかしくない状況だ。このような状況下で、敢えて鎮静薬投与する必要はない。意識清明下の気管挿管に対して鎮静薬を用いることはあるも、本患者は現時点でSpO2がリザーバー付マスク酸素投与下とはいえ98%と高値を維持できているため、気管挿管は考慮しない。
c 正しい。ショック状態に対し、細胞外液を補う。
d 逆Trendelenburg位とは頭を高く保つ体位であり、本症例のような出血多量時には脳虚血を誘発しやすい。
e 正しい。FASTにより、すみやかに原因臓器の同定や体腔内出血の確認を行う。

正答率:98%

テーマ:交通外傷後のショック状態の患者に適切な対応

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