118B32

78歳の女性。軽度の腰痛を主訴に来院した。昨年までは朝と夕とに1日30分程度のウォーキングをしていたが、最近、15分くらいしか歩行できなくなり、自宅でつまずくことが多くなった。膝の痛みはないが、軽度の腰痛があるため受診した。生来健康であり既往歴に特記すべきことはない。喫煙歴はない。飲酒はビール350mL/日を週に3回。身長153cm、体重57kg。BMI 24.4。神経診察で異常を認めない。腰椎エックス線写真で軽度の変形性脊椎症の所見を認めた。
この患者に対する指導で適切なのはどれか。
「禁酒をしましょう」
「外出は控えましょう」
「体重を減らしましょう」
「腰痛が治まるまでベッド上で安静にしましょう」
「転倒に気をつけて片足立ちやスクワットをしましょう」

解答: e

118B32の解説

【ポイント】
変形性脊椎症を背景にした移動機能の低下。ロコモティブシンドローム〈運動器症候群〉(ないし背景疾患の存在に重きを置けば運動器不安定症;選択肢の「片足立ちやスクワット」という記載からは出題者の意図としてロコモティブシンドロームが考えやすいため以下ではロコモティブシンドロームのみの記載とする)である。これに対する指導を行う超頻出タイプの問題であるが、正答率は60%と必修臨床として悲惨な結果に。もしかしたら出題者も想定していなかった割れ問なのかもしれない。

【選択肢考察】
a ビール350mL/日を週3回は過剰とは言えないし、そもそも飲酒とロコモティブシンドロームは直接の関係がない。
b むしろ適度な外出を推奨し、身体を動かすよう指導する。
c 約36%の者が本選択肢を選び、撃沈。各自思うところはあるのだろうが、この選択肢が正解だったら出題者はBMIを24.4(注:BMIの基準値は18.5〜25)に設定しないだろう。近年AIの普及が加速しているが、(少なくとも118回時点では)未だに医師国家試験は人間が作っている。繰り返すが「問題として適正になるように(炎上しないように恐る恐る慎重に)作りこまれている」のだ。この選択肢を選んでしまった者には医学の勉強以前に、こうした別の視点から問題を見据えることのできる練習を推奨したい。
d ベッド上安静では運動機能がさらに低下してしまう。むしろ適度に身体を動かすよう指導する。
e 正しい。片足立ちやスクワットはロコモーショントレーニングとも呼ばれ、本患者に有効である。「転倒に気をつけて」という枕詞からは出題者の愛を感じる。必修臨床で正答率が60%の問題は往々にして駄作が多いが、本問はその例外と(つまり良問と)感じた。

正答率:60%

テーマ:運動器不安定症(ロコモティブシンドローム)患者に対する指導

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