118A52

21歳の男性。胸背部痛のため救急車で搬入された。シャワー中に意識消失した。数分で意識は回復したが、胸背部痛が出現したため救急車を要請した。小児期に水晶体偏位と診断され眼鏡を使用している。大学のトライアスロンの選手。家族歴に特記すべきことはない。意識は清明。身長186cm、体重65kg。体温36.3℃。心拍数64/分、整。血圧132/50mmHg。呼吸数20/分。SpO2 100%(マスク5L/分 酸素投与下)。心音は胸骨左縁第4肋間にLevine 2/6の拡張期雑音を聴取する。四肢が長い。心電図に異常を認めない。胸部造影CTの水平断像(A)、冠状断像(B)および矢状断像(C)を別に示す。緊急で手術し、術後10日目で退院予定になった。
患者への説明で誤っているのはどれか。
「β遮断薬を服用していただきます」
「トライアスロンを続けても大丈夫です」
「定期的な大動脈の画像検査が必要です」
「胸痛や背部痛があったら受診してください」
「遺伝カウンセリングを受けることができます」

解答: b

118A52の解説

【ポイント】
「小児期に水晶体偏位と診断」、「四肢が長い」といった記載よりMarfan症候群を考えよう。画像はいずれも大動脈の解離を示している。胸骨左縁第4肋間の拡張期雑音は大動脈弁閉鎖不全症〈AR〉ないし大動脈弁輪拡張症〈AAE〉であろう。

【選択肢考察】
a 「していただきます」という少し上から目線(パターナリズム?)的な言葉尻が微妙だったためか、あるいは(術前のデータだが)血圧132/50mmHgに降圧は不要と考えたのか、17%もの受験生が選択してしまった。たとえ現状、高血圧がみられていなかったとしても、β遮断薬には大動脈解離を進行抑制させる効力があるため用いられる。言葉尻が微妙である、という点は筆者も同意であり、違和感が残る。が、他に明らかな誤りがある以上、本選択は正しいと判断せざるを得ない。
b 誤り。手術は終了しているも、Marfan症候群の背景がある以上、再発の可能性もある。激しいスポーツの継続は危険だ。
c 定期的に画像検査でフォローアップしたい。
d 再発を早期に拾い上げるべく、重要な指導だ。
e 本人の希望にあわせ、遺伝カウンセリングを受けることができる。

正答率:82%

テーマ:大動脈解離により緊急手術後のMarfan症候群患者への説明

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