117F45

58歳の男性。定期受診で来院した。高血圧性腎硬化症による慢性腎臓病で半年前から自宅近くの診療所に通院している。喫煙は35年前から20本/日。飲酒はビール350mL/日を週2回。身長170cm、体重84kg。BMI 29.0。脈拍72/分、整。血圧136/88mmHg。尿所見:蛋白2+、糖(-)、潜血(-)。血液所見:赤血球392万、Hb 12.8g/dL、Ht 37%、白血球5,600、血小板21万。血液生化学所見:総蛋白7.0g/dL、アルブミン3.8g/dL、尿素窒素28mg/dL、クレアチニン1.8mg/dL、尿酸7.8mg/dL、Na 140mEq/L、K 4.9mEq/L、Cl 103mEq/L、Ca 9.4mg/dL、P 5.6mg/dL。1か月前の食事調査で蛋白質摂取量168g/日(2.0g/kg)、食塩摂取量9.5g/日であった。
この患者の腎機能維持に有用性が低いのはどれか。
禁煙
禁酒
体重の減量
食塩摂取制限
蛋白質摂取制限

解答: b

117F45の解説

【プロセス】
本文中の情報から腎機能維持に有用な指導を選ぶ問題。

【選択肢考察】
a 「喫煙は35年前から20本/日」とのことで、禁煙を指導する。
b 誤り。アルコールが直接的に腎機能を低下させることはないため、健常人と同じ範囲の適正飲酒量(ビールは500mL/日までOK)であれば、禁酒は必要ない。本文中に「飲酒はビール350mL/日を週2回」とあるため、問題ない。
c BMI 29.0であり、減量は必要だ。
d 血圧136/88mmHgと高値血圧である。75歳未満で尿蛋白陽性があるため、降圧目標は130/80mmHg未満。塩分制限は必要だろう。現状9.5g/日の摂取があるため、これを6g未満に制限したい。
e 58歳の男性でクレアチニン1.8mg/dLのため、eGFR値は31.8(慢性腎臓病〈CKD〉ステージG3b)。CKDはステージG3a以降で0.8g/kg/日程度に蛋白制限が必要となるため、2.0g/kg/日は多すぎる。なお、まれに質問を受けるので念のため書いておくが、eGFRの算出には複雑な計算が必要になるため、家庭ではオンラインで「eGFR 算出」などと検索して数値を入力することで求める。試験会場で受験生が算出できる類の値ではない。ゆえに試験本番ではCKDのステージがG3bであると確証を持てないはずだ。その場合でも、健常人に必要な蛋白摂取量は1.0g/kg/日(この値は目安として覚えておくとよい)程度であるため、いくらなんでも2倍は摂りすぎと判断可能。

正答率:98%

テーマ:慢性腎臓病患者の腎機能維持に有用な指導内容

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