117F42

75歳の女性。全身倦怠感を主訴に来院した。1年前に骨転移を伴う進行肺小細胞癌と診断され、腰椎骨転移に対して放射線照射を施行後、薬物による抗癌治療が行われたが効果が乏しく、3か月前から薬物による抗癌治療は行わない方針となった。1週間前から全身倦怠感が著明となり入院した。意識は清明であるが受け答えは緩慢である。身長161cm、体重42kg。体温36.9℃。脈拍104/分、整。血圧112/62mmHg。呼吸数20/分。SpO2 95%(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。腰背部に叩打痛を認める。胸腹部・骨盤部CTで多発腰椎転移の増悪を認めたが、既に放射線照射を施行した部位であり、再照射は不可能と判断された。疼痛コントロールのためオキシコドン20mg/日の経口投与を開始したが、5日経過後も疼痛コントロールは十分でなく、嚥下障害で内服が困難となったため経口薬を中止した。
オピオイドローテーションとして適切なのはどれか。
高用量塩酸モルヒネを急速静注する。
塩酸モルヒネを経鼻胃管から投与する。
オキシコドンの持続点滴静注を開始する。
モルヒネ塩酸塩水和物坐薬を3時間ごとに投与する。
フェンタニル口腔粘膜吸収剤を1時間ごとに投与する。

解答: c

117F42の解説

【プロセス】
①骨転移を伴う進行肺小細胞癌
②薬物による抗癌治療は行わない方針
③放射線照射は不可能
④オキシコドン20mg/日の経口投与を開始したが、5日経過後も疼痛コントロールは十分でなく、嚥下障害で内服が困難
☞①〜③より終末期と読み取れる。④からはオキシコドン20mg/日の経口投与では不十分で、かつ内服以外のオプションが必要とされる。

【選択肢考察】
a 呼吸抑制により、死に至らしめる危険性あり。★禁忌★。
b 本選択肢を選んだ受験生が約6割。本文を読むに、経口内服が継続できない理由が「嚥下障害」となっているため、たしかに経鼻胃管で錠剤を砕く等の対処で投与することは可能そうだ。他医師の意見や論文等を当たってみても「錠剤は経口投与が原則」「経鼻胃管経由では時間がかかる」「医療者が都度準備しなくてはならず、本人が実施困難」等の意見を得られたのみであった(原則が何であろうが、時間がかかろうが、医療者が大変だろうが、真に必要であれば実行すべきであり、いずれも直接的な理由になっていない)。残念ながら、ここは机上の学問と臨床での実際が乖離するところである。シンプルに「注射した方が早いし効果的」というのが実際のところと言えよう。本選択肢を選んでしまった者は(得点につながらなかったのは残念だが)思考法としては正しいので安心してほしい。
c 正しい。「オピオイドローテーション」という概念には薬物の種類を変更する以外に、投与経路を変更するという意味も含む。経口摂取が困難であるため、同一薬物の持続点滴静注を試みたい。むろん、本選択肢も正直微妙だ。本文では「嚥下障害で内服が困難となった」という記載の手前に「疼痛コントロールは十分でなく」と記載がある。そのため、投与経路以前にオキシコドン自体が効力を発揮できていないと読み取れる。ゆえに同一薬物を投与し続けるのは意味がないのではないか、とも考えられてしまう。せめて実際の容量を明記してほしかったところだが、それを明記してしまうと今度はその値の適正についても議論する必要があり、専門性の高い、難しすぎる問題になってしまうのだろう。出題のジレンマに悩む中で、中途半端な悪問になってしまった印象のある問題。そんなこんなで採点除外問題となった。
d レスキューとして頓用するのが一般的。ベースの鎮痛薬として長期に使い続けるものではない。
e レスキューとして頓用するのが一般的。ベースの鎮痛薬として長期に使い続けるものではない。

正答率:12%

テーマ:オピオイドローテーションの実際

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