117E49

次の文を読み、以下の問いに答えよ。
47歳の男性。頭痛と発熱を主訴に来院した。
現病歴:3日前から微熱と全身倦怠感を自覚した。昨日から頭痛を自覚し、体温が38℃以上となったため、市販の解熱鎮痛薬を服用していた。今朝、起床時から、頭痛が増強するとともに、悪心が出現し、嘔吐した。38℃以上の発熱も持続するため、独歩で受診した。
既往歴:24歳時に急性虫垂炎で手術。
生活歴:喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。
家族歴:父が高血圧症。
現 症:意識は清明。身長172cm、体重70kg。体温39.2℃。脈拍96/分、整。血圧124/70mmHg。呼吸数16/分。SpO2 98%(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。口腔内と咽頭とに異常を認めない。甲状腺腫と頸部リンパ節とを触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。四肢に浮腫を認めない。
診断のためにまず確認すべき所見はどれか。
眼振
項部硬直
Barré徴候
Babinski徴候
Romberg徴候

解答: b

117E49の解説

【プロセス】
①3日前から微熱と全身倦怠感
②昨日から頭痛
③今朝、起床時から、頭痛が増強するとともに、悪心が出現し、嘔吐
④38℃以上の発熱も持続
☞発熱(①④)と頭痛(②③)、悪心・嘔吐(③)から何を考えるか。結論を言ってしまうと髄膜炎なのであるが、情報量が少なく、1問目の選択肢の顔ぶれを見る前に髄膜炎と断言できた者は少なかったのではないだろうか。ポイントは設問文。「診断のために」と書いてあるのを見逃さないようにしよう。選択肢のなかで、何かしらの疾患の診断につながるものは1つしかない。また、2問目の情報を先に読んでしまうのも手だ。血液培養を行っている以上、感染症が考えやすい。さらには頭部単純CTで異常を認めていないため、くも膜下出血〈SAH〉や脳梗塞は否定的。もっと言ってしまえば、2問目の選択肢的に神経、循環器、消化管、いずれかの科目からの出題であることが予想され、1問目では神経ないし耳鼻咽喉科の出題と予想できるため、総じて神経からの出題と絞り込める。「発熱と頭痛」をみる神経の疾患であれば、2問目の正解は必然的に「脳脊髄液検査」と確定され、1問目の正解も「項部硬直」と分かる。まぁ、もちろん100%の精度とは言わないし、この解き方は邪道以外何者でもないが、視点を少し変えるだけで問題が一気に解きやすくなる良い例である(正攻法で解いた後の検算的に使えるとよい)。

【選択肢考察】
a 前庭や脳幹・小脳の障害で眼振が生じるが、眼振がみられたからといって何かしらの疾患の診断ができるわけではない。
b 正しい。項部硬直がみられた場合、髄膜炎が考えやすい。むろん、例えばくも膜下出血〈SAH〉でも項部硬直はみられるが、「3日前からの発熱」が合致しない。また冒頭で延べたように、頭部CT的にもSAHは否定的。
c Barré徴候が陽性の場合、脱力があることが分かるが、だからといって何かしらの特定の疾患を診断できるわけではない。
d Babinski徴候が陽性の場合、錐体路障害が考えられるが、錐体路障害をきたす疾患は山ほどあり、診断にはほど遠い。
e Romberg徴候が陽性の場合、前庭や深部覚障害が疑われるが、特定の疾患を診断できるわけではない。

正答率:100%

テーマ:【長文1/2】髄膜炎の診断のためにまず確認すべき所見

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