117E41

次の文を読み、以下の問いに答えよ。
60歳の男性。嘔吐を主訴に来院した。
現病歴:1年前に胃癌で胃全摘術を受け、その後外来で約8か月間抗癌化学療法を継続した。2か月前に腫瘍マーカーの上昇と肝・肺転移を指摘され、再度抗癌化学療法を受けたが、治療効果が認められず中止となった。その際に本人と家族に数か月の予後と告知され、自宅に近い当院での外来通院を希望し、転院となった。特に症状なく経過していたが、1か月前から時々腹痛を自覚し、オピオイドの定期内服とレスキューが処方されていた。1週間前から悪心を認め、今朝になり嘔吐したため受診した。
既往歴:特記すべきことはない。
生活歴:妻と2人暮らし。2人の子供はいずれも県外に在住している。喫煙は20歳から59歳まで20本/日。飲酒は機会飲酒。
家族歴:父が胃癌のため70歳で死亡。
現 症:意識は清明。身長175cm、体重56kg。体温36.4℃。脈拍92/分、整。血圧110/70mmHg。呼吸数26/分。SpO2 96%(room air)。眼球結膜に黄染を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部はやや膨隆しているが軟で、腹部全体に圧痛があり、金属音を聴取する。心窩部に肝を触知する。両下肢に軽度の浮腫を認める。神経診察で異常を認めない。
検査所見:血液所見:赤血球364万、Hb 10.3g/dL、Ht 32%、白血球7,400、血小板18万。血液生化学所見:総蛋白5.9g/dL、アルブミン2.4g/dL、総ビリルビン0.8mg/dL、AST 152U/L、ALT 66U/L、LD 387U/L(基準120~245)、ALP 189U/L(基準38~113)、γ-GT 62U/L(基準8~50)、CK 42U/L(基準30~140)、尿素窒素28mg/dL、クレアチニン0.9mg/dL、血糖80mg/dL、総コレステロール190mg/dL、Na 143mEq/L、K 3.5mEq/L、Cl 92mEq/L。Ca 10.1mg/dL。CRP 4.5mg/dL。胸部エックス線写真で両肺に多発小結節影を認める。
この患者の嘔吐の原因として考慮すべきもので誤っているのはどれか。
肺転移
心理的要因
高カルシウム血症
オピオイドの副作用
癌性腹膜炎による消化管閉塞

解答: a

117E41の解説

【プロセス】
胃癌が肝・肺転移した終末期の患者。昨今の国試長文問題で増えているパターンだが、これだけ長い文章を提示しておきながら、全く読む必要がない。単に一般問題が2つ並んでいるだけである。臨床問題に対し「1行目から最後まで丁寧に読む」というスタイルと、「設問文と選択肢を先に見てしまい、必要に応じて臨床文をつまみ読みする」というスタイル、の2つが昔からある。もちろん、どちらが良いかはケース・バイ・ケースなのであるが、こういう問題が増加している以上、まず後者を試す方が時間を有効活用できることは否定しようがない。

【選択肢考察】
a 誤り。肺転移は嘔吐の直接の原因とはならない。
b 心理的要因により嘔吐をきたすことがある。機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群など、メンタル面が消化管に影響を及ぼしやすいことを思い出そう。
c 高カルシウム血症にて悪心・嘔吐や食欲不振、便秘といった消化管症状がみられることは絶対に覚えてほしい。
d オピオイドの副作用として悪心・嘔吐、便秘といった消化管症状がみられる。ゆえに制吐薬や緩下薬を適宜併用する。
e モロに「消化管閉塞」と示してあり、嘔吐をきたしやすいことは明らかだ。

正答率:90%

テーマ:【長文1/2】嘔吐の原因

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