117E29

83歳の女性。腰痛を主訴に来院した。持続性の腰痛に対して、自宅近くの医院で処方されたNSAIDを服用していた。一時的に疼痛は緩和したが、再び増悪したため紹介受診した。精査の結果、多発肝転移を伴う膵癌と診断された。薬物による抗癌治療などの積極的な治療を希望しなかった。食事摂取量は以前と比較し、わずかに減少している。
この患者に対する疼痛緩和としてまず行うのはどれか。
NSAIDの増量
持続硬膜外麻酔
膵癌への放射線照射
オピオイドの経口投与
副腎皮質ステロイド投与

解答: d

117E29の解説

【プロセス】
①自宅近くの医院で処方されたNSAIDを服用していた
②疼痛が再び増悪
③多発肝転移を伴う膵癌と診断
④薬物による抗癌治療などの積極的な治療を希望しない
⑤食事摂取量は以前と比較し、わずかに減少
☞③より終末期と判断する。①②より現状のNSAIDでは痛みが抑えきれていないため、何かしらの対応が必要となる。⑤の記載の意図は分かっただろうか? 「薬物の経口摂取が可能」という出題者のメッセージだと思われる。

【選択肢考察】
a 悩むとしたらこれであろう。約4割の受験生が選択した。気持ちは分かる。そもそも現状のNSAIDの処方は腰痛に対してのものであり、癌を想定した量ではないと考えられ、増量することで疼痛をしばらくは抑え込むことができる可能性がある。が、今一度③を刮目して読んでほしい。多発肝転移を伴う膵癌の終末期の疼痛が果たしてNSAIDだけで封じ込めるだろうか。答えはNoだ。
b 硬膜外カテーテルの挿入には侵襲を伴う。④を読むに、患者の希望には反する疼痛緩和方法だろう。
c ④より膵癌自体への治療は行わない。
d 正しい。オピオイドの経口投与が現時点でまず行うべき疼痛緩和方法だ。
e たしかに副腎皮質ステロイドには抗炎症作用があり、症状緩和が期待される。が、これのみで③の疼痛を封じ込めるとは到底言えず、補助薬としての位置づけとなる。

正答率:63%

テーマ:終末期に有効な疼痛緩和

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