117D72

35歳の男性。健診で高血圧と腎機能低下を指摘されて来院した。自覚症状はない。父が血液透析を受けていたが、1年前にクモ膜下出血で突然死した。胸腹部に異常を認めない。下腿に浮腫を認めない。尿所見:蛋白(-)、糖(-)、潜血(-)。血液所見:赤血球444万、Hb 12.7g/dL、Ht 39%、白血球4,900、血小板21万。血液生化学所見:総蛋白7.3g/dL、アルブミン4.8g/dL、尿素窒素19mg/dL、クレアチニン1.9mg/dL、尿酸6.6mg/dL、Na 142mEq/L、K 4.5mEq/L、Cl 107mEq/L、Ca 9.1mg/dL。腹部単純CT冠状断像を別に示す。
この患者の治療方針を決定するために必要な検査はどれか。
腎生検
FDG-PET
頭部MRA
胸部エックス線撮影
上部消化管内視鏡検査

解答: c

117D72の解説

【プロセス】
①35歳の男性
②健診で高血圧と腎機能低下を指摘
③自覚症状はない
④父が血液透析→1年前にくも膜下出血〈SAH〉で突然死
⑤胸腹部に異常を認めない
⑥腹部単純CT冠状断像にて両側腎に嚢胞の多発
☞⑥より多発性嚢胞腎〈PKD〉を考える。②も矛盾しない。PKDには常染色体優性遺伝〈AD〉のものと常染色体劣性遺伝〈AR〉のものとがあるが、①③より成人発症と考えられ、ADPKDと分かる。ADPKDには脳動脈瘤を合併しやすく、④も説明がつく。

【選択肢考察】
a 対症療法として穿刺やドレナージが行われることはあるも、腎生検は腎機能低下に追い打ちをかける危険性があるため、危険である。
b 悪性腫瘍の全身転移検索などに有効。
c 正しい。父と同じく、脳動脈瘤を合併している可能性があるため、それを頭部MRAにて検索したい。
d ⑤より積極的に胸部異常を疑うものではない。ADPKDの胸部合併症としては心臓弁膜症が挙げられるが、そもそもエックス線で心臓弁膜症は同定困難。強いて言うなら高血圧からの心不全にて心拡大などみられる可能性はあるが、それを示したからといって「治療方針を決定」とはならない。
e ADPKDの消化管合併症としては大腸憩室が挙げられるが、これは下部消化管の異常であり、上部消化管内視鏡検査は必要ない。

正答率:97%

テーマ:常染色体優性多発性嚢胞腎〈ADPKD〉の検査

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