117D66

75歳の男性。易疲労感を主訴に来院した。5年前に再生不良性貧血と診断され免疫抑制療法を開始したが改善を認めず、4年前からは2週間おきに赤血球輸血を継続して受けている。身長165cm、体重58kg。体温36.3℃。脈拍100/分、整。眼瞼結膜は軽度貧血様で、眼球結膜に黄染を認めない。胸骨右縁第2肋間を最強点とするLevine 2/6の収縮期雑音を聴取する。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。皮膚は暗褐色。血液所見:赤血球200万、Hb 5.8g/dL、Ht 19%、網赤血球0.2%、白血球2,200(分葉核好中球8%、好酸球2%、好塩基球1%、リンパ球89%)、血小板4.0万。血液生化学所見:総蛋白6.2g/dL、アルブミン2.8g/dL、総ビリルビン1.1mg/dL、直接ビリルビン0.8mg/dL、AST 129U/L、ALT 12U/L、LD 360U/L(基準120~245)、尿素窒素19mg/dL、クレアチニン0.7mg/dL、空腹時血糖90mg/dL、Fe 250μg/dL、フェリチン2,500ng/mL(基準20~120)。CRP 0.2mg/dL。腹部単純CTで肝実質CT値の上昇を認めた。
この患者への対応で正しいのはどれか。
瀉血
肝移植
造血幹細胞移植
鉄キレート剤の投与
エリスロポエチン製剤の投与

解答: d

117D66の解説

【プロセス】
①4年前から2週間おきに赤血球輸血を継続
②皮膚は暗褐色
③Fe上昇
④フェリチン高度上昇
⑤腹部単純CTで肝実質CT値の上昇
☞頻回な輸血(①)を受けている患者の皮膚変化(②)。血中の鉄(③)と貯蔵鉄(④)が高値を示しており、肝臓への鉄沈着も予想される(⑤)。ヘモクロマトーシスの診断。

【選択肢考察】
a 通常のヘモクロマトーシスには瀉血が有効だが、本症例は再生不良性貧血の背景にて貧血があるため、瀉血は行わない。
b 新生児ヘモクロマトーシスなど限られた症例で肝移植が行われることがあるも、本症例では輸血が原因として考えられるため、行われない。
c 背景疾患である再生不良性貧血〈AA〉には造血幹細胞移植が行われることがあるも、原則として適応は40歳未満であり、75歳である本患者には適用外となる。
d 正しい。鉄キレート剤を投与することで、臓器障害を軽減させることができる。
e 本患者では腎障害はない(クレアチニン0.7mg/dL)ため、エリスロポエチン産生に問題はないと考えられる。しかるに、再生不良性貧血の背景から慢性的な貧血があるため、本患者でのエリスロポエチンは既に高値であることが予想される。

正答率:88%

テーマ:ヘモクロマトーシスへの対応

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