117D65

84歳の女性。意識障害のため救急車で搬入された。一人暮らしだが、訪れた家族が布団に横たわり呼びかけに応じないのに気付き、救急車を要請した。意識レベルはJCS II-30。身長151cm、体重48kg。体温35.1℃。心拍数40/分、整。血圧88/40mmHg。呼吸数12/分。SpO2 92%(マスク5L/分 酸素投与下)。顔面は浮腫状で眉毛の脱失がある。甲状腺腫を触知する。下腿に非圧痕性の浮腫を認める。尿所見:蛋白+、糖(-)、潜血(-)。血液所見:Hb 7.2g/dL。血液生化学所見:総ビリルビン2.0mg/dL、AST 98U/L、ALT 86U/L、γ-GT 60U/L(基準8~50)、尿素窒素20mg/dL、クレアチニン1.14mg/dL、Na 128mEq/L、K 4.8mEq/L、Cl 98mEq/L、TSH 197μU/mL(基準0.2~4.0)、FT4 0.02ng/dL(基準0.8~2.2)。心電図で徐脈と四肢誘導での低電位を認める。胸部エックス線写真を別に示す。
この患者の検査所見として誤っているのはどれか。
抗TPO抗体陽性
血清総コレステロール高値
TSH刺激性受容体抗体陽性
抗サイログロブリン抗体陽性
脳性ナトリウム利尿ペプチド〈BNP〉高値

解答: c

117D65の解説

【プロセス】
①84歳の女性
②意識障害(JCS II-30)
③心拍数40/分
④血圧88/40mmHg
⑤顔面は浮腫状・眉毛の脱失・甲状腺腫・非圧痕性の浮腫
⑥Hb 7.2g/dL
⑦低ナトリウム血症(Na 128mEq/L)
⑧TSH高値・FT4低値
⑨心電図で徐脈と四肢誘導での低電位
⑩胸部エックス線写真にて心拡大と肺うっ血・胸水貯留
☞高齢者の意識障害(①②)の鑑別は多岐にわたるが、徐脈(③)、低血圧(④)、特徴的外観(⑤)、貧血(⑥)などから甲状腺機能低下症を考える。⑦〜⑩も矛盾しない。甲状腺機能低下症を背景とした意識障害ときたら、粘液水腫性昏睡である。粘液水腫性昏睡は女性に多く、①の設定も矛盾しない。

【選択肢考察】
a 甲状腺機能低下症の代表格である慢性甲状腺炎〈橋本病〉では抗TPO抗体が陽性となる。
b 甲状腺機能が低下すると、血清総コレステロールは増加する。
c 誤り。TSH刺激性受容体抗体〈TSAb〉(抗TSH受容体抗体〈TRAb〉の1つ)が陽性となるのはBasedow病(甲状腺機能亢進症)である。
d 甲状腺機能低下症の代表格である慢性甲状腺炎〈橋本病〉では抗サイログロブリン抗体が陽性となる。
e ⑩より心不全が読み取れ、BNPが高値である可能性が高い。

正答率:89%

テーマ:慢性甲状腺炎〈橋本病〉の検査所見

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