117D61

58歳の男性。貧血の精査のため来院した。3か月前から続く体重減少と腹部膨満感のため自宅近くの診療所を受診したところ、貧血を指摘され紹介受診した。胸骨右縁第2肋間を最強点とする収縮期雑音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。左肋骨弓下に脾を5cm触知する。表在リンパ節を触知しない。血液所見:赤血球243万、Hb 7.8g/dL、Ht 25%、白血球13,900(骨髄芽球3%、前骨髄球3%、骨髄球6%、後骨髄球1%、桿状好中球3%、分葉好中球37%、好酸球14%、好塩基球13%、単球2%、リンパ球18%)、血小板8.0万。末梢血好中球BCR-ABL(FISH法)陰性、骨髄穿刺はdry tapであった。骨髄の生検組織のH-E染色標本(A)と鍍銀染色標本(B)を別に示す。
この患者の末梢血でみられるのはどれか。
球状赤血球
破砕赤血球
標的赤血球
有棘赤血球
涙滴赤血球

解答: e

117D61の解説

【プロセス】
①3か月前から続く体重減少と腹部膨満感
②貧血を指摘(Hb 7.8g/dL)
③胸骨右縁第2肋間を最強点とする収縮期雑音を聴取(貧血の代償)
④左肋骨弓下に脾を5cm触知
⑤白血球分画に様々な芽球(骨髄芽球3%、前骨髄球3%、骨髄球6%、後骨髄球1%)
⑥末梢血好中球BCR-ABL(FISH法)陰性
⑦骨髄穿刺はdry tap
⑧骨髄の生検組織のH-E染色標本(A)にて巨核球の増加
⑨鍍銀染色標本(B)にて線維化
☞⑦〜⑨が強いヒントになる。原発性骨髄線維症〈PMF〉である。PMFでは巨大脾腫(④)により消化管が圧迫され、腹部膨満感や食思不振、さらには体重減少をみる(①)。また骨髄の線維化による正常造血低下で貧血(②③)や白赤芽球症〈LEB〉(⑤)を呈する。なお、⑥より慢性骨髄性白血病〈CML〉は否定的。

【選択肢考察】
a 球状赤血球は遺伝性球状赤血球症〈HS〉や自己免疫性溶血性貧血〈AIHA〉にてみられる。
b 破砕赤血球は血栓性血小板減少性紫斑病〈TTP〉や溶血性尿毒症症候群〈HUS〉、播種性血管内凝固〈DIC〉にてみられる。
c 標的赤血球はサラセミアにてみられる。
d 有棘赤血球は神経有棘赤血球症や無βリポタンパク血症にてみられる。
e 正しい。涙滴赤血球はPMFにてみられる。

正答率:98%

テーマ:原発性骨髄線維症〈PMF〉の末梢血でみられる赤血球

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