117D48

80歳の女性。左上下肢の脱力を主訴に救急車で搬入された。本日午前6時に起床したときから、左上下肢の脱力としゃべりにくさを自覚していたが、様子をみていた。夕方、左上下肢の麻痺が増悪したため救急車を要請した。高血圧症と糖尿病で治療中である。日常生活動作は自立しており、脳血管障害の既往や不整脈の指摘はない。意識は清明。心拍数82/分、整。血圧154/82mmHg。復唱は可能だが構音障害を認める。左顔面を含む左上下肢の不全片麻痺を認めた。来院時の頭部MRIの拡散強調像(A)、FLAIR像(B)及びMRA(C)を別に示す。
直ちに行うべき治療で適切なのはどれか。2つ選べ
抗血小板薬内服
機械的血栓回収療法
グリセオール静注療法
t-PA〈tissue plasminogen activator〉静注療法
直接経口抗凝固薬[direct oral anti coagulant〈DOAC〉]内服

解答: a,c

117D48の解説

【プロセス】
①80歳の女性
②起床したときから、左上下肢の脱力としゃべりにくさを自覚
③夕方、左上下肢の麻痺が増悪
④高血圧症と糖尿病で治療中
⑤構音障害・左顔面を含む左上下肢の不全片麻痺
⑥来院時の頭部MRI(A/B)にて高信号域
⑦MRA(C)にて主幹動脈に閉塞なし
☞背景疾患(④)のある高齢者(①)の突然発症した進行性麻痺(②③⑤)。⑥と合わせ、脳梗塞の診断。⑦は専門医でも読影に意見が分かれる微妙なライン。右中大脳動脈の枝に狭窄が疑われる箇所があるも、細い枝であり、少なくとも機械的血栓回収療法は不可能と判断できれば十分。

【選択肢考察】
a 正しい。抗血小板薬は脳梗塞に有効。
b 機械的血栓回収療法はカテーテルの到来が可能な主幹動脈の閉塞に適応となる。冒頭で述べたように本症例では行わない。
c 正しい。グリセオールは浸透圧利尿薬であり、脳梗塞急性期の脳浮腫対策に有効。
d 発症時刻がそもそも明らかでない&確実に4.5時間以上が経過しているため、t-PAは適応外。
e DOACは非弁膜症性心房細動の存在下で有効となる。本問では敢えて「不整脈の指摘はない」「心拍数82/分、整」と書いてあり、この選択肢を除外させたいものと思われる。

正答率:28%

テーマ:脳梗塞に直ちに行うべき治療

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