117D45

45歳の男性。発熱と倦怠感を主訴に来院した。10日前にアフリカ中西部から日本に入国した。7日前から発熱、倦怠感および食欲不振が出現したため、滞在中のホテルに近い医療機関に入院した。補液、抗菌薬投与などが行われたが、発熱が持続し貧血が進行してきたため、緊急で転院となった。意識は清明。体温40.0℃。心拍数100/分、整。血圧92/60mmHg。呼吸数20/分。SpO2 98%(room air)。眼瞼結膜は貧血様で、眼球結膜に黄染を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、右肋骨弓下に肝を3cm触知する。血液所見:赤血球327万、Hb 8.9g/dL、Ht 24%、白血球9,300(桿状核好中球3%、分葉核好中球79%、単球4%、リンパ球14%)、血小板15万、PT-INR 1.16(基準0.9~1.1)。血液生化学所見:総蛋白5.5g/dL、アルブミン2.1g/dL、総ビリルビン1.9mg/dL、直接ビリルビン1.0mg/dL、AST 56U/L、ALT 38U/L、LD 653U/L(基準120~245)、ALP 70U/L(基準38~113)、γ-GT 46U/L(基準8~50)、尿素窒素18mg/dL、クレアチニン1.2mg/dL、血糖107mg/dL、Na 135mEq/L、K 3.6mEq/L、Cl 104mEq/L。CRP 21mg/dL。末梢血塗抹May-Giemsa染色標本を別に示す。
この疾患について正しいのはどれか。2つ選べ
防蚊対策が予防に有効である。
原因微生物はウイルスである。
飛沫感染でヒト-ヒト感染する。
重症化すると多臓器不全を起こす。
過去10年間に日本国内で感染した例がある。

解答: a,d

117D45の解説

【プロセス】
①10日前にアフリカ中西部から日本に入国
②7日前から発熱、倦怠感および食欲不振
③発熱が持続(体温40.0℃)し貧血が進行(Hb 8.9g/dL)
④眼球結膜に黄染
⑤右肋骨弓下に肝を3cm触知
⑥総蛋白とアルブミンともに低値
⑦末梢血塗抹May-Giemsa染色標本にて輪状体〈ring form〉
☞輸入感染症(①)のうち、高熱(②③)と貧血(③)、黄疸(④)、肝腫大(⑤;教科書的には脾腫が有名だが肝腫大が優位なこともある)を呈するものを絞り込む。⑦からマラリア感染と分かる。マラリア原虫は赤血球に寄生するため、溶血をきたし③④がみられる。⑥は②による低栄養のためであろう。

【選択肢考察】
a 正しい。ハマダラカにより媒介されるため、防蚊対策が予防に有効。
b 原因微生物は原虫である。
c 蚊による媒介が原因となる。ヒト-ヒト感染はしない。
d 正しい。脳症や腎不全、播種性血管内凝固〈DIC〉といった多臓器にわたる合併症に注意が必要。
e 昔は日本土着のマラリアも多かったようだが、2000年代に入ってからは100%が輸入感染症である。

正答率:94%

テーマ:マラリア症について

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