117D43

53歳の女性。労作時息切れを主訴に来院した。1か月前に自宅の階段を昇る際に息切れを自覚し、その後も症状が増悪するため受診した。眼瞼結膜は貧血様で、眼球結膜に黄染を認める。胸骨右縁第2肋間を最強点とするLevine 2/6の収縮期雑音を聴取する。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。圧痛を認めない。血液所見:赤血球260万、Hb 7.8g/dL、Ht 27%、網赤血球4.2%、白血球5,400(桿状核好中球5%、分葉核好中球58%、好酸球2%、単球13%、リンパ球22%)、血小板38万。血液生化学所見:総蛋白7.4g/dL、アルブミン3.8g/dL、総ビリルビン5.5mg/dL、直接ビリルビン0.9mg/dL、AST 37U/L、ALT 29U/L、LD 740U/L(基準120~245)、ALP 66U/L(基準38~113)、尿素窒素18mg/dL、クレアチニン0.7mg/dL、尿酸4.5mg/dL、ハプトグロビン2mg/dL(基準19~170)。免疫血清学所見:CRP 0.6mg/dL、直接Coombs試験陽性。
この患者に行う初期治療で正しいのはどれか。
脾臓の摘出
造血幹細胞移植
抗C5抗体の投与
抗CD20抗体の投与
副腎皮質ステロイド薬の投与

解答: e

117D43の解説

【プロセス】
①自宅の階段を昇る際に息切れを自覚
②眼瞼結膜は貧血様
③眼球結膜に黄染
④胸骨右縁第2肋間を最強点とする収縮期雑音
⑤赤血球260万、Hb 7.8g/dL、Ht 27%
⑥網赤血球4.2%
⑦総ビリルビン5.5mg/dL、直接ビリルビン0.9mg/dL(間接ビリルビン優位の上昇)
⑧LD高値
⑨ハプトグロビン低値
⑩直接Coombs試験陽性
☞②⑤より貧血を考える。①④は貧血の症候である。③⑦より黄疸を伴っていることが分かり、⑥〜⑨より溶血性疾患と判断する。⑩と合わせ、自己免疫性溶血性貧血〈AIHA〉の診断。

【選択肢考察】
a 脾摘が有効なこともあるが、初期治療ではない。
b 難治例のAIHAで行われることがあるが、初期治療ではない。むしろ造血幹細胞移植後に続発性AIHAが発生しやすいとの報告もある。
c 発作性夜間ヘモグロビン尿症〈PNH〉の治療である。
d ステロイド無効のAIHAにて抗CD20抗体(リツキシマブ)が用いられることもあるが、初期治療ではない。
e 正しい。副腎皮質ステロイドはAIHAの第一選択薬である。

正答率:94%

テーマ:自己免疫性溶血性貧血〈AIHA〉の初期治療

フォーラムへ投稿

関連トピック

なし