117D33

1歳8か月の女児。けいれん発作のため救急車で搬入された。1週間前から鼻汁と咳嗽、3日前から夜間の発熱があったが、食欲や機嫌は良好だった。睡眠中に突然右上下肢の間代けいれんが出現したため、家族が救急車を要請した。けいれん発作は30分持続し、救急車内で消失した。生来健康で、発達の異常を指摘されたことはない。けいれん発作の既往もない。意識レベルはJCS III-100。体温38.0℃。けいれん発作は認めないが、意識障害が遷延したため入院となった。直ちに脳波の持続モニタリングを行ったところ、左頭頂部と後頭部に棘徐波が頻発していた。人工呼吸管理下で抗けいれん薬の持続投与を行ったところ、脳波上の棘徐波は消失した。入院6日目の頭部MRIのT2強調像(A)と拡散強調像(B)を別に示す。
可能性が高い疾患はどれか。
急性脳症
熱性けいれん
無菌性髄膜炎
急性小脳失調症
急性散在性脳脊髄炎

解答: a

117D33の解説

【プロセス】
①1歳8か月の女児
②1週間前から鼻汁と咳嗽、3日前から夜間の発熱
③睡眠中に突然右上下肢の間代けいれんが出現
④意識レベルはJCS III-100(意識障害が遷延)
⑤脳波の持続モニタリングにて左頭頂部と後頭部に棘徐波が頻発
⑥入院6日目の頭部MRI(A・B)にて広範囲な高信号域
☞①〜③からは熱性けいれんを真っ先に思い浮かべるが、熱性けいれんでは④〜⑥のような異常を認めないため否定的。⑤⑥からは脳自体に変化が生じていると考えられ、急性脳症と判断される。本症例のような、感染症の有熱期にけいれんで発症し、数日後にけいれん再発ないし意識障害の増悪を認めるものを特にけいれん重積型(二相性)急性脳症〈AESD〉と呼ぶ。1990年代後半から認識されはじめた比較的新しい脳症症候群であるが、日本の小児急性脳症の中では最も頻度が高いとされる。

【選択肢考察】
a 正しい。上記の通り。
b 冒頭で述べたように否定的。
c MRIにて広範囲な脳の変化がみられ、髄膜炎では説明がつかない。
d MRIにて広範囲な脳の変化がみられ、小脳単独の病態とは考えにくい。
e 急性散在性脳脊髄炎〈ADEM〉ではMRIにて散在性(多巣性)の病変が出現する。

正答率:39%

テーマ:急性脳症の診断

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