117D31

71歳の女性。発熱を主訴に来院した。2週間前から38℃の発熱が出現し持続するため自宅近くの診療所を受診し、腎機能障害を指摘されたため紹介受診した。体温37.8℃。脈拍92/分、整。血圧148/78mmHg。頭頸部に異常を認めない。心音に異常を認めない。呼吸音は両側背部でfine cracklesを聴取する。関節の腫脹や圧痛を認めない。難聴を認めない。尿所見:蛋白2+、糖(-)、潜血2+、沈渣に赤血球10~20/HPF、白血球1~5/HPF、顆粒円柱、赤血球円柱を認める。血液所見:赤血球390万、Hb 11.6g/dL、Ht 36%、白血球8,500、血小板18万。血液生化学所見:総蛋白7.5g/dL、アルブミン2.8g/dL、IgG 1,260mg/dL(基準960~1,960)、IgA 240mg/dL(基準110~410)、IgM 105mg/dL(基準65~350)、AST 30U/L、ALT 21U/L、LD 205U/L(基準120~245)、ALP 75U/L(基準38~113)、γ-GT 34U/L(基準8~50)、尿素窒素48mg/dL、クレアチニン2.2mg/dL、尿酸8.1mg/dL、血糖88mg/dL、HbA1c 5.5%(基準4.6~6.2)、LDLコレステロール88mg/dL。免疫血清学所見:CRP 2.2mg/dL、リウマトイド因子40IU/mL(基準15以下)、MPO-ANCA 350U/mL(基準3.5未満)、PR3-ANCA 0.1U/mL(基準3.5未満)、抗核抗体陰性、血清補体価(CH50)62U/mL(基準30~40)。頭頸部CTに異常を認めないが、胸部CTで両側下葉を主体に間質性陰影を認める。腎生検のPAS染色標本を別に示す。
最も考えられる疾患はどれか。
IgA血管炎
結節性多発動脈炎
顕微鏡的多発血管炎
多発血管炎性肉芽腫症
クリオグロブリン血症性血管炎

解答: c

117D31の解説

【プロセス】
①71歳の女性
②2週間前から38℃の発熱が出現し持続
③腎機能障害を指摘(尿蛋白2+・潜血2+・クレアチニン2.2mg/dL)
④呼吸音は両側背部でfine cracklesを聴取
⑤難聴なし
⑥リウマトイド因子陽性
⑦MPO-ANCA高値
⑧PR3-ANCA基準値内
⑨血清補体価(CH50)上昇
⑩胸部CTで両側下葉を主体に間質性陰影
⑪腎生検のPAS染色標本にて半月体形成と周囲の細胞浸潤
☞高齢者(①)に発熱(②)と腎障害(③)・間質性肺炎(④⑩)がみられている。⑪と合わせ、急速進行性糸球体腎炎〈RPGN〉を呈する血管炎を疑いたい。⑦が決定打であろう。顕微鏡的多発血管炎〈MPA〉の診断。⑥は一部の血管炎でみられることがあるも、非特異的所見である。

【選択肢考察】
a 腹痛や紫斑といったIgA血管炎の典型所見がなく、病理像におけるIgA沈着も示されていないため、否定的。
b 結節性多発動脈炎も血管炎の1つであるが、MPO-ANCAは陽性とならない。
c 正しい。上記の通り。
d ⑤⑧より多発血管炎性肉芽腫症は否定的。
e クリオグロブリン血症性血管炎では補体の低下を認める。⑨より否定的。

正答率:98%

テーマ:顕微鏡的多発血管炎〈MPA〉の診断

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