117D25

86歳の男性。定期受診で来院した。高血圧症で自宅近くの診療所に通院し、10年前から現在の降圧薬を内服しているが、最近、残薬が多い。体調は良いが、この1年間で体重が約5kg減少したことが気になるという。2か月前に体重減少の精査のために総合病院を紹介され、悪性腫瘍のスクリーニングと内分泌検査が施行されたが、異常は指摘されなかった。1年前に妻と死別してから独居で、最近、小食になったと感じている。以前は、散歩や買い物、友人訪問などでほぼ毎日外出していたが、最近は外出が減っている。身長165cm、体重51kg。脈拍72/分、整。血圧142/86mmHg。家庭血圧130台/70台。尿所見:蛋白(-)、糖(-)、ケトン体(-)、潜血(-)。血液所見:赤血球418万、Hb 13.8g/dL、Ht 40%、白血球6,800、血小板18万。血液生化学所見:総蛋白6.8g/dL、アルブミン3.8g/dL、尿素窒素32mg/dL、クレアチニン1.5mg/dL、eGFR 34.7mL/分/1.73m2、尿酸5.8mg/dL、総コレステロール190mg/dL、中性脂肪128mg/dL、Na 141mEq/L、K 4.5mEq/L、Cl 104mEq/L、Ca 8.8mg/dL、P 4.6mg/dL。採血結果は最近1年間で大きな変化はない。
この患者への対応で適切なのはどれか。3つ選べ
栄養指導
自宅安静
降圧薬減量
認知機能評価
介護認定の申請

解答: a,d,e

117D25の解説

【プロセス】
①86歳の男性
②最近、残薬が多い
③体調は良いが、この1年間で体重が約5kg減少した
④1年前に妻と死別してから独居で、最近、小食に
⑤最近は外出が減っている
⑥eGFR 34.7mL/分/1.73m2
⑦採血結果は最近1年間で大きな変化なし
☞④の「妻と死別」が契機になったのであろうか、③の体重減少や抑うつ傾向を疑う⑤がみられている。高齢者(①)であり、②からは認知症も疑われる。⑥は慢性腎臓病の重症度分類においてG3bに該当し、腎機能低下も想定したい。が、⑦より腎機能低下は最近発生したものではなく、慢性的な経過であることも読み取ってほしい。


【選択肢考察】
a 正しい。少食になり体重減少がみられており、栄養指導が必要だ。
b 自宅安静を推奨してはますますフレイルが進行してしまう。
c 本選択肢を試験当日に選んだ者が約半数。非常に気持は分かる。残薬が多いのに血圧管理が良好(86歳で尿蛋白陰性であるため診察室血圧で140/90mmHg、家庭血圧で読み替えれば135/85mmHg未満が降圧目標となる)なので、「本当は不要なほど多い量が処方されているのではないか」と降圧薬減量の必要性を感じてしまうのだ。が、実際に降圧薬減量をした際にどのような結果になることが予想されるだろうか? 臨床文の展開や他選択肢的にも本患者には認知機能低下があることが想定され、結局のところ、また残薬が発生するのではないだろうか。本人が「体調は良い」と言っており、かつ現状で過剰な降圧がみられているわけではない以上、服薬調整よりもまずは認知機能評価等、周辺環境の調整の方が優先される。
d 正しい。認知機能が低下していないか確認したい。
e 正しい。独居の高齢者で、認知機能低下や抑うつ傾向がみられているため、介護認定の申請をし、ヘルパーやデイサービスを導入するのが望ましい。

正答率:54%

テーマ:高齢患者への対応

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