117D20

29歳の女性(0妊0産)。腹部膨満感を主訴に来院した。半年前から体外受精-胚移植の不妊治療を受けており、4日前に14個採卵した。受精卵はすべて凍結保存されている。意識は清明。身長154cm、体重52kg(2日で2kg増量)。体温36.8℃。脈拍80/分、整。血圧104/56mmHg。呼吸数28/分。SpO2 96%(room air)。腹部は軟で、膨隆し波動を認める。内診で子宮は正常大、可動性は良好である。腹部超音波検査で、径10cmの両側卵巣腫大と多量の腹水貯留とを認める。心エコー検査で異常を認めない。血液所見:赤血球565万、Hb 16.8g/dL、Ht 51%、白血球11,800、血小板37万、PT-INR 1.0(基準0.9~1.1)、血漿フィブリノゲン580mg/dL(基準186~355)、Dダイマー2.9μg/mL(基準1.0以下)。血液生化学所見:総蛋白5.6g/dL、アルブミン3.0g/dL、尿素窒素26mg/dL、クレアチニン0.81mg/dL、Na 134mEq/L、K 5.1mEq/L、Cl 96mEq/L。
腹水貯留の原因となるのはどれか。
腹膜炎
右心不全
腎機能障害
門脈圧亢進
血管透過性亢進

解答: e

117D20の解説

【プロセス】
①半年前から体外受精-胚移植の不妊治療
②体重は2日で2kg増量
③腹部は膨隆し波動を認める
④腹部超音波検査で、径10cmの両側卵巣腫大と多量の腹水貯留
⑤赤血球565万、Hb 16.8g/dL、Ht 51%
⑥血漿フィブリノゲン・Dダイマー高値
⑦低蛋白&低アルブミン血症
☞②③は腹水貯留によるものと考えられ、④にて卵巣が病態の首座とも分かる。①と合わせ、卵巣過剰刺激症候群〈OHSS〉が想定される。⑤の血液濃縮、⑥の凝固亢進(OHSSは播種性血管内凝固〈DIC〉を合併しやすいこともチェック)、血管外への蛋白漏出(⑦)も矛盾しない。

【選択肢考察】
a 発熱や腹痛を伴っておらず、腹膜炎は否定的。
b 心エコー検査で異常を認めておらず、右心不全は否定的。
c クレアチニン値は正常であり、腎機能障害は否定的(OHSSでは腎血流低下から腎前性腎不全を呈することがあるが、この患者では腎機能障害はみられていないようだ)。
d 門脈圧亢進の原因となる肝硬変などの所見は認めない。
e 正しい。血管透過性亢進がOHSSの原因である。

正答率:97%

テーマ:卵巣過剰刺激症候群〈OHSS〉における腹水貯留の原因

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