117D19

68歳の男性。意識障害のため救急車で搬入された。家族によると、20年前から糖尿病で内服加療中であり、最近は飲酒量が多かった。持参した糖尿病診療歴を記録したノートによると、血糖降下薬としてビグアナイド薬およびDPP-4阻害薬を内服しており、最近の血液検査でクレアチニン1.2mg/dL、HbA1c 6.8%であった。意識レベルはJCS II-20。身長168cm、体重58kg。体温36.1℃。心拍数88/分、整。血圧86/54mmHg。呼吸数28/分、SpO2 98%(room air)。皮膚は乾燥している。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。尿所見:蛋白2+、糖+、ケトン体(-)。血液生化学所見:総ビリルビン1.0mg/dL、AST 54U/L、ALT 46U/L、γ-GT 168U/L(基準8~50)、尿素窒素38mg/dL、クレアチニン2.0mg/dL、血糖128mg/dL、HbA1c 6.6%(基準4.6~6.2)、Na 138mEq/L、K 3.8mEq/L、Cl 94mEq/L。
この患者で認められるのはどれか。
食後の低血糖
呼気のアセトン臭
呼吸性アシドーシス
代謝性アルカローシス
アニオンギャップの増加

解答: e

117D19の解説

【プロセス】
①20年前から糖尿病で内服加療中
②最近は飲酒量が多かった
③血糖降下薬としてビグアナイド薬&DPP-4阻害薬を内服
④最近の血液検査でクレアチニン1.2mg/dL
⑤意識レベルはJCS II-20
⑥呼吸数28/分・皮膚は乾燥
⑦本日のクレアチニン2.0mg/dL
⑧尿ケトン体(-)・血糖128mg/dL
☞①③より薬剤の副作用を考える。DPP-4阻害薬には単剤にて重篤な副作用はないため、ビグアナイド薬が原因として大本命である。ビグアナイド薬は腎排泄性であるため、糖尿病腎症の背景(④⑦)下で血中濃度が上昇し、副作用を呈しやすい。⑤⑥からは糖尿病性ケトアシドーシス〈DKA〉も鑑別に挙がるが、⑧よりDKAは否定的。ビグアナイド薬の副作用である、乳酸アシドーシスをきたしたと考えるのが妥当だろう。なお、アルコール(②)にはビグアナイド薬の代謝を阻害し、脱水を加速させる作用があり、これが乳酸アシドーシス発症の誘因になった思われる。

【選択肢考察】
a ダンピング症候群でみられる。
b DKAでみられる(冒頭の解説で除外済)。
c 代謝性アシドーシス(とその代償として呼吸性アルカローシス)となる。
d 代謝性アシドーシス(とその代償として呼吸性アルカローシス)となる。
e 正しい。乳酸は不揮発酸であるため、アニオンギャップは増加する。

正答率:82%

テーマ:乳酸アシドーシスの所見

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