117C69

次の文を読み、以下の問いに答えよ。
58歳の男性。胸痛を主訴に救急車で搬入された。
現病歴:数日前から労作時や夜間就寝時に胸部圧迫感があったが、約30分で治まるため様子をみていた。本日、草野球の試合に出て活躍していたが、突然、強い胸痛が出現したため救急車を要請した。
既往歴:2年前から高血圧症で降圧薬を内服している。
生活歴:妻と2人暮らし。会社員で営業の仕事をしている。
家族歴:父が高血圧症。
現 症:体温37.2℃。心拍数108/分、整。血圧78/58mmHg。呼吸数24/分。SpO2 99%(リザーバー付マスク10L/分 酸素投与下)。顔面蒼白で冷汗を認める。心音は微弱で軽度の拡張期雑音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。
検査所見:血液所見:Hb 10.2g/dL、白血球10,100、血小板15万。血液生化学所見:CK 230U/dL(基準30~140)、CK-MB 20U/L(基準20以下)、尿素窒素25mg/dL、クレアチニン1.1mg/dL。CRP 3.2mg/dL。心筋トロポニンT迅速検査陰性。心電図(A)と心エコー検査を施行した後、胸部造影CT(B)を行った。
この患者で考えられるのはどれか。2つ選べ
急性心膜炎
急性心筋梗塞
収縮性心膜炎
急性大動脈解離
心タンポナーデ

解答: d,e

117C69の解説

【プロセス】
①数日前から労作時や夜間就寝時に胸部圧迫感
②本日、草野球の試合中に突然、強い胸痛
③2年前から高血圧症で降圧薬を内服(父が高血圧症)
④心音は微弱
⑤軽度の拡張期雑音を聴取
⑥心電図(A)ではV6誘導での陰性T波
⑦胸部造影CT(B)にて上行大動脈の解離と心嚢液貯留
☞⑦よりStanford A型の大動脈解離とそれに合併した心タンポナーデの診断となる。①の前駆からの②や、③の背景、心タンポナーデによる④、Stanford A型の大動脈解離に合併しやすい大動脈弁閉鎖不全症〈AR〉によると思われる⑤も矛盾しない。⑥はどちらかというと積極的な診断目的というよりも、「明らかなST上昇がない」という観点から急性心筋梗塞〈AMI〉や急性心膜炎を除外するために提示されている印象。

【選択肢考察】
a 急性心膜炎では心膜摩擦音が聴取される。
b AMIではCK-MBや心筋トロポニンTが陽性となる可能性が高い。
c 収縮性心膜炎では心膜ノック音が聴取される。また、CTにて心膜の石灰化を認める。
d 正しい。上記の通り。
e 正しい。上記の通り。

正答率:91%

テーマ:【長文1/3】急性大動脈解離と心タンポナーデの診断

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