117C45

24歳の男性。意識障害のため救急車で搬入された。3か月前から職場の上司にパワハラを受けていると悩んでいた。今朝、自宅のガレージで倒れているのを母親が発見し、救急車を要請した。本人の着衣と口腔内からは強い有機溶媒臭がしており、ガレージには灯油が残ったコップがあった。搬入後、次第に呼吸状態の悪化を認めた。意識レベルはJCS III-100。体温36.8℃。心拍数104/分、整。血圧120/80mmHg。呼吸数32/分。SpO2 88%(リザーバー付マスク10L/分 酸素投与下)。
次に行うべき適切な対応はどれか。
胃洗浄
血液透析
気管挿管
大量輸液
高気圧酸素治療

解答: c

117C45の解説

【プロセス】
①3か月前から職場の上司にパワハラを受けていると悩んでいた
②今朝、自宅のガレージで倒れているのを母親が発見
③本人の着衣と口腔内からは強い有機溶媒臭がしており、ガレージには灯油が残ったコップ
④意識レベルはJCS III-100
⑤呼吸数32/分。SpO2 88%(リザーバー付マスク10L/分 酸素投与下)
☞①を苦にし、灯油を飲み込み(③)、自殺を図った可能性が考えやすい。②④より意識レベルは望ましくないことがわかり、⑤よりまずは気道確保が必要と判断できる。

【選択肢考察】
a 中毒性物質を摂取した直後(目安としては1時間以内)であれば胃洗浄が有効なこともあるが、本症例ではいつ灯油を飲んだのかが不明であり、適応とならない。さらに言うなら、灯油の場合、農薬などとは異なり、胃洗浄にて誤嚥、そして化学性肺炎を惹起する恐れがある。そのため、灯油やガソリンを飲み込んだ者への胃洗浄は一般に★禁忌★とされている。
b 灯油はそのネーミングに "油" とつくことからも分かるように、脂溶性が高く、水溶性が低い。こうした物質は血液透析の効果があまり期待できないことが知られる。なお、もし状況設定的に血液透析が有効な物質を飲み込んだのだとしても、現時点で優先されるのは気道確保であるため正解にならない。
c 正しい。リザーバー付マスク10L/分での酸素投与下にも関わらず、SpO2が88%と低い。気管挿管、人工呼吸が最優先となる。
d 血圧低下はみられておらず、大量輸液の優先度は低い。
e 救急〜中毒領域では、一酸化炭素中毒や減圧症に有効な治療法である。

正答率:99%

テーマ:灯油を飲み込んだ自殺企図患者への対応

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