117B38

67歳の男性。腹部膨満感、右季肋部痛およびふらつきを主訴に来院した。半年以上前から右季肋部痛を自覚していたが、3か月前から痛みが増強するとともに腹部膨満感が出現、1か月前から黒色の軟便が見られるようになり、2週間前からふらつきが強まった。ここ3か月で体重が5kg減少している。意識は清明だが、問診の意味が把握しにくいようで、聴覚障害と軽度の知的障害が疑われる。身長154cm、体重53kg。体温35.9℃。脈拍84/分、整。血圧112/72mmHg。呼吸数13/分。眼瞼結膜は蒼白で眼球結膜に軽度黄染を認める。腹部は膨満しており、波動を認める。両下腿に強い浮腫を認める。一人暮らしで身寄りがなく、生活保護を受けている。民生委員が同伴で受診しており、問診の際も民生委員を介して聞き取りを行ったが、生活状況などについて十分な情報が聴取できない。
まず取るべき対応で正しいのはどれか。
医師が患者に代わって診療方針を決定する。
診療方針について患者本人に説明し意向を聞く。
民生委員を成年後見人とみなして診療方針について相談する。
患者本人の意思決定困難を理由にこれ以上の検査治療を行わない。
医学的検査の結果に基づき、客観的に治療の適否や内容を決定する。

解答: b

117B38の解説

【プロセス】
①聴覚障害と軽度の知的障害が疑われる67歳の男性
②問診の意味が把握しにくい模様
③一人暮らしで身寄りがなく、生活保護を受けている
④民生委員が同伴
⑤生活状況などについて情報が聴取できない
☞肝胆膵領域の病態が疑われるが、本問の趣旨は診断にはない。自己決定権に関する必修的な典型問題。本問では③の記載により話がシンプルになっているが、実際のケースでは家族の関与など、さまざまな要素が絡み複雑な対応が必要となりそうだ。しかしながら我々は今、医師国家試験の必修問題を解いているわけであり、素直に「(たとえ①②のような事情があろうと)患者本人の自己決定権が最優先される」というスタンスで挑めば問題ない。

【選択肢考察】
a 診療方針を決定するのは患者本人である。
b 正しい。まずは診療方針について患者本人に説明し意向を聞くことが第一である。
c 成年後見人を決定するのは裁判所である。医療者が勝手に「みなす」のは不可。
d 診療放棄である。これが万が一正解だとすると、我が国に大量に存在する認知症患者など、意思決定が困難な者が適正な医療を受けられなくなってしまう。大問題である。
e 医学的検査の結果に基づき、客観的に治療の適否や内容を「説明する」のであれば、正解。冒頭にも述べたように、あくまで「決定する」のは患者本人である以上、不適切。

正答率:85%

テーマ:聴覚・知的障害が疑われる患者への対応

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