117A74

88歳の女性。下血を主訴に救急車で搬入された。朝から痛みを伴う右下腹部膨隆に気付き、その後に下血を認めたため救急車を要請した。両側大腿骨頸部骨折で人工骨頭置換術の既往がある。意識は清明。身長152cm、体重42kg。体温37.0℃。心拍数104/分、整。血圧98/56mmHg。腹部は全体に膨隆しており、腸雑音は亢進している。右鼠径部に径3cmの膨隆があり、緊満し圧痛を認めた。血液所見:赤血球368万、Hb 12.9g/dL、Ht 36%、白血球15,600、血小板21万。血液生化学所見:総蛋白6.5g/dL、アルブミン2.9g/dL、総ビリルビン0.9mg/dL、AST 28U/L、ALT 26U/L、LD 287U/L(基準120~245)、CK 162U/L(基準30~140)、尿素窒素44mg/dL、クレアチニン1.8mg/dL。CRP 4.7mg/dL。来院時の骨盤部単純CT(A、B)を別に示す。
対応として正しいのはどれか。
浣腸
緊急手術
経過観察
イレウス管留置
鼠径膨隆部の穿刺

解答: b

117A74の解説

【プロセス】
①88歳の女性
②朝から痛みを伴う右下腹部膨隆→その後下血
③両側大腿骨頸部骨折で人工骨頭置換術の既往(画像中のアーチファクトの補足説明)
④心拍数104/分・血圧98/56mmHg
⑤腹部は全体に膨隆しており、腸雑音は亢進
⑥右鼠径部に径3cmの膨隆があり、緊満し圧痛を認めた
⑦アルブミン2.9g/dL
⑧LD高値、CK高値
⑨尿素窒素44mg/dL、クレアチニン1.8mg/dL
⑩CRP高値
⑪来院時の骨盤部単純CT(A)にて鏡面形成、(B)にて右鼠径部領域にヘルニア
☞⑥⑪より鼠径部領域のヘルニア(鼠径ヘルニアの可能性も大腿ヘルニアの可能性もあり)に起因する絞扼性イレウスの診断。これにより腹膜炎をきたし(⑤⑧)、脱水と腎不全(⑨)、栄養低下(⑦)、頻脈と血圧低下(④)、炎症(⑩)をきたしている。好発年齢と性別(①)、症候(②)も合致する。栄養低下(⑦)と腎機能低下(⑨)は高齢者である(①)というファクターも寄与していると考えられる。

【選択肢考察】
a 腸閉塞に対する浣腸は腸管穿孔等のリスクがあるため、不適切。
b 正しい。絞扼性イレウスに至っており、緊急手術の適応である。
c 経過観察では命の危機に直面しかねない。★禁忌★。
d 単純性の腸閉塞に対する治療。嵌頓を伴う絞扼性イレウスを解除することはできない。
e 腸を穿刺することになり、病態が悪化する。★禁忌★。

正答率:97%

テーマ:ヘルニア嵌頓への対応

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