117A68

22歳の男性。発熱と呼吸困難を主訴に救急車で搬入された。幼少時に心室中隔欠損症と診断されたが手術療法は選択されなかった。以後、総合病院に年1回通院している。2か月前に咳嗽を伴う38℃の発熱が出現した。自宅近くの診療所を受診し、セフェム系抗菌薬を処方され、3日後に解熱した。3週間前から再度、悪寒を伴う37.8℃の発熱を認め、抗菌薬を内服したが、微熱、全身倦怠感は持続した。昨夜から、39℃台の発熱と咳嗽の悪化があり、呼吸困難で寝ることができなくなったため救急車を要請した。意識は清明。身長170cm、体重62kg。体温39.5℃。心拍数124/分、整。血圧130/80mmHg。呼吸数28/分。SpO2 96%(リザーバー付マスク10L/分 酸素投与下)。胸骨左縁第3肋間にLevine 2/6の全収縮期雑音を聴取する。血液所見:Hb 9.2g/dL、白血球11,300(桿状核好中球60%、分葉核好中球24%、好酸球0%、好塩基球1%、リンパ球15%)、血小板6.3万。CRP 12.2mg/dL。胸部エックス線写真で両側性にびまん性の浸潤影を認めた。カラードプラ心エコー図で心室中隔欠損部の近傍に腫瘤性の病変(矢印)を認めた。
最も考えられる診断はどれか。
感染性心内膜炎
急性肺血栓塞栓症
Eisenmenger症候群
多発血管炎性肉芽腫症
全身性エリテマトーデス

解答: a

117A68の解説

【プロセス】
①発熱と呼吸困難
②幼少時に心室中隔欠損症〈VSD〉と診断
③2か月前に咳嗽を伴う38℃の発熱が出現
④胸骨左縁第3肋間にLevine 2/6の全収縮期雑音
⑤Hb 9.2g/dL
⑥白血球11,300(好中球増加)、CRP 12.2mg/dL
⑦血小板6.3万
⑧胸部エックス線写真で両側性にびまん性の浸潤影
⑨カラードプラ心エコー図で心室中隔欠損部の近傍に腫瘤性の病変とVSDによる左室→右室シャント
☞①③⑥より長期に及ぶ細菌感染症を考える。④は②に伴う雑音として矛盾ない。⑦では血小板減少がみられ、敗血症や播種性血管内凝固〈DIC〉傾向の可能性あり。⑨より肺動脈弁直下の右室内に存在する疣贅と思しき腫瘤性病変が指摘可能。総じて感染性心内膜炎〈IE〉の診断となる。⑤は慢性炎症に続発する二次性貧血、⑧は心不全による肺水腫であろう。

【選択肢考察】
a 正しい。上記の通り。
b 急性肺血栓塞栓症は文字通り、肺動脈に血栓が詰まっている病態であり、右室内に腫瘤は認めない。
c Eisenmenger症候群では右→左シャントをみる。本症例では画像上、左→右シャントが確認できるため否定的。
d 多発血管炎性肉芽腫症〈GPA〉〈Wegener肉芽腫〉では上気道〈E〉、下気道〈L〉、腎〈K〉に症状がみられる。
e 全身性エリテマトーデスでも発熱がみられることはあるが、右室内の腫瘤性病変はみられない。

正答率:97%

テーマ:感染性心内膜炎〈IE〉の診断

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