117A63

32歳の男性。発熱を主訴に救急外来を受診した。東南アジア各地に合計7日間滞在した後に帰国し2日目である。現地滞在6日目から39℃台の発熱と全身倦怠感とが出現していたが、入国時には一時的に解熱していたため空港検疫では申し出なかったという。帰国後も発熱が続き、受診前日から頻繁に嘔吐している。下痢はない。四肢の筋肉痛を訴える。意識は清明。身長172cm、体重60kg。体温39.1℃。脈拍112/分、整。血圧92/52mmHg。呼吸数24/分。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。口腔粘膜に点状出血を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は肝を右肋骨弓下に4cm触知するが、脾は触知しない。血液所見:赤血球450万、Hb 12.2g/dL、Ht 60%、白血球2,000、血小板8.0万。血液生化学所見:総蛋白6.5g/dL、アルブミン4.1g/dL、総ビリルビン0.8mg/dL、直接ビリルビン0.3mg/dL、AST 122U/L、ALT 112U/L、LD 222U/L(基準120~245)、尿素窒素30mg/dL、クレアチニン1.4mg/dL。末梢血塗抹標本で赤血球に異常を認めない。
最も考えられる疾患はどれか。
エボラ出血熱
A型肝炎
腸チフス
デング熱
マラリア

解答: d

117A63の解説

【プロセス】
①東南アジア各地に合計7日間滞在した後に帰国し2日目
②現地滞在6日目から39℃台の発熱と全身倦怠感
③入国時には一時的に解熱していたため空港検疫では申し出なかった
④嘔吐、四肢の筋肉痛、口腔粘膜に点状出血、肝を右肋骨弓下に4cm触知
⑤末梢血塗抹標本で赤血球に異常を認めない
☞検疫スルー(③)されてしまった輸入感染症。最もヒントになるのは潜伏期であろう。さすがにこの文脈で東南アジア渡航前、すなわち日本で元から感染していたと考えるのはナンセンスであるため、潜伏期は①②より最大6日である。

【選択肢考察】
a エボラ出血熱の潜伏期は2〜21日であるため、ここは矛盾しない。しかし東南アジアではなく、アフリカから帰国した者でみられやすい。約15%もの受験生が当時、この選択肢を選択してしまっているが、そもそも1類感染症が日本に入ってくるのは相当深刻な状況であり、いくらペーパーテストとはいえ、そうした不謹慎な問題を国試で出題しようとは思わないだろう。エボラ出血熱について確固たる学習をしてきた者が自信をもって選択したならまだしも、なんとなくで本選択肢を選んでしまった者は猛省されたい。
b A型肝炎の潜伏期は数週〜数か月単位。
c 腸チフスの潜伏期は1〜2週。
d 正しい。デング熱の潜伏期は3〜7日であり、④も矛盾しない。
e マラリアの潜伏期は約2週間。また、マラリア原虫は赤血球に規制するため、⑤より否定的。

正答率:56%

テーマ:デング熱の診断

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