117A62

40歳の男性。胸やけを主訴に来院した。2か月前から食事中のつかえ感を自覚し、2週間前から胸やけを伴うようになり受診した。16歳からアトピー性皮膚炎で加療中である。喫煙歴はない。飲酒はビール350mL/日を20年間。家族歴に特記すべきことはない。意識は清明。身長172cm、体重60kg。体温36.2℃。脈拍76/分、整。血圧126/78mmHg。呼吸数14/分。SpO2 99%(room air)。顔面、頸部、体幹および四肢に対称的に紅斑、丘疹および痂皮を認める。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。甲状腺腫と頸部リンパ節とを触知しない。腹部は平坦、軟で、圧痛を認めない。血液所見:赤血球458万、Hb 13.7g/dL、Ht 41%、白血球7,300(桿状核好中球20%、分葉核好中球30%、好酸球8%、好塩基球1%、単球6%、リンパ球35%)、血小板24万。血液生化学所見:総蛋白7.9g/dL、アルブミン4.2g/dL、総ビリルビン0.9mg/dL、AST 24U/L、ALT 18U/L、LD 178U/L(基準120~245)、ALP 86U/L(基準38~113)、γ-GT 38U/L(基準8~50)、アミラーゼ85U/L(基準37~160)、尿素窒素20mg/dL、クレアチニン0.8mg/dL、血糖92mg/dL。CRP 0.1mg/dL。プロトンポンプ阻害薬を処方されたが、症状は改善しなかった。上部消化管内視鏡検査の食道像(A)と生検組織のH-E染色標本(B)とを別に示す。
この患者で考えられる疾患はどれか。
食道癌
逆流性食道炎
好酸球性食道炎
食道アカラシア
食道カンジダ症

解答: c

117A62の解説

【プロセス】
①男性
②食事中のつかえ感と胸やけ
③16歳からアトピー性皮膚炎で加療中
④顔面、頸部、体幹および四肢に対称的に紅斑、丘疹および痂皮
⑤好酸球8%
⑥プロトンポンプ阻害薬〈PPI〉無効
⑦上部消化管内視鏡検査の食道像(A)にて縦走溝と輪状収縮輪、白斑の存在
⑧生検組織のH-E染色標本(B)にて好酸球の集簇
☞典型的症状(②)、⑧より好酸球性食道炎〈EoE〉の診断となる。疫学(①)や背景(③④〔アトピー〕と⑤)、内視鏡所見(⑦)も合致する。EoEの第一選択薬はPPIであるため、⑥を記載した出題者の意図は不明であるが、逆流性食道炎を否定したかった可能性が考えられる。

【選択肢考察】
a 食道癌であれば腫瘤性病変が内視鏡でみられ、病理では異型細胞が出現するはず。
b 上記の通り、否定的。
c 正しい。上記の通り。
d 食道アカラシアであれば内視鏡で狭窄をみる。
e 食道カンジダ症でみられるのは白苔であり、本症例でみられている白斑とは見え方が異なる。また、AIDSの背景や免疫抑制治療中といった背景がない、健常な40歳男性に食道カンジダ症がみられる可能性は低い。

正答率:97%

テーマ:好酸球性食道炎の診断

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