117A54

33歳の男性。右下腹部の激痛を主訴に救急車で搬入された。昨日から下腹部に違和感があり、徐々に痛みが増強し我慢できなくなったため救急車を要請した。24歳時に虫垂切除術の既往がある。意識は清明。身長168cm、体重78kg。体温38.5℃。心拍数108/分、整。血圧100/62mmHg。SpO2 97%(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦だが、Blumberg徴候を認め、右下腹部には筋性防御を認める。腸雑音は減弱している。血液所見:赤血球486万、Hb 15.0g/dL、Ht 44%、白血球18,000(好中球82%、好酸球1%、好塩基球1%、単球6%、リンパ球10%)、血小板26万、PT-INR 0.9(基準0.9~1.1)。血液生化学所見:総蛋白8.1g/dL、アルブミン5.1g/dL、総ビリルビン1.2mg/dL、AST 23U/L、ALT 30U/L、LD 166U/L(基準120~245)、ALP 39U/L(基準38~113)、γ-GT 25U/L(基準8~50)、アミラーゼ44U/L(基準37~160)、CK 64U/L(基準30~140)、尿素窒素17mg/dL、クレアチニン1.2mg/dL、尿酸6.4mg/dL、血糖109mg/dL、Na 140mEq/L、K 3.9mEq/L、Cl 101mEq/L、Ca 9.8mg/dL。CRP 19mg/dL。腹部造影CT(頭側から順にA〜D)を別に示す。
この患者の治療法で適切なのはどれか。
緊急手術
高圧浣腸
緩下薬投与
イレウス管留置
腹腔穿刺ドレナージ

解答: a

117A54の解説

【プロセス】
①右下腹部の激痛
②24歳時に虫垂切除術の既往
③体温38.5℃・白血球18,000・CRP 19mg/dL
④Blumberg徴候と筋性防御
⑤腸雑音は減弱
⑥腹部造影CT(特にCがわかりやすい)では回盲部の造影効果が高く、周囲の脂肪組織混濁あり
☞③④より細菌感染による腹膜炎が考えやすい。①からは急性虫垂炎も一瞬鑑別に挙がるが、②より否定的。⑥では感染の原因が回盲部にあることがわかるが、確定診断は困難(比較的若めであり、部位とあわせ、Meckel憩室炎などが考えやすい)。

【選択肢考察】
a 正しい。腹膜炎を呈しており、緊急手術の適応となる可能性がある。むろん、この症例文と画像だけからは絶対的な緊急手術の適応と断ずることはできず、実臨床では抗菌薬による保存的治療が選ばれる可能性もある。本文では他の選択肢が明らかに誤りであるため、これが正解として残る。
b 腸重積症の治療である。
c 便秘症の治療である。
d 腸閉塞(イレウス)の治療である。⑤は麻痺性イレウスの症候であるものの、小腸の拡張像などはみられておらず、かつ既に明らかな腹膜炎を呈しているため、イレウス管による減圧は無効と判断する。
e 腹水貯留時などの治療である。

正答率:91%

テーマ:腹膜炎の治療法

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