117A36

60歳の男性。下腹部痛を主訴に来院した。3日前から微熱と下腹部痛を自覚し、徐々に増悪するため受診した。悪心のため食欲不振があるが嘔吐はない。下腹部痛は持続しており、排便により軽快しない。下痢や便秘はない。22歳時、虫垂切除術を受けている。内服薬はない。喫煙歴はない。飲酒は日本酒1合/日を40年間。家族歴に特記すべきことはない。1年前に受けた人間ドックで下部消化管内視鏡検査を施行し、大腸憩室を指摘されている。身長175cm、体重70kg。体温37.1℃。脈拍96/分、整。血圧136/88mmHg。呼吸数14/分。SpO2 98%(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。腹部は平坦で、下腹部正中に圧痛を認め、筋性防御と反跳痛とを認めない。肝・脾を触知しない。腸雑音に異常を認めない。尿所見:蛋白(-)、糖(-)、潜血(-)。血液所見:赤血球468万、Hb 13.9g/dL、Ht 42%、白血球12,300(桿状核好中球30%、分葉核好中球45%)、血小板20万。血液生化学所見:総蛋白7.5g/dL、アルブミン3.9g/dL、総ビリルビン0.9mg/dL、AST 28U/L、ALT 16U/L、LD 177U/L(基準120~245)、ALP 83U/L(基準38~113)、γ-GT 48U/L(基準8~50)、アミラーゼ95U/L(基準37~160)、尿素窒素12mg/dL、クレアチニン0.6mg/dL、血糖98mg/dL。CRP 3.2mg/dL。1年前に行われた下部消化管内視鏡検査のS状結腸像(A)と今回来院時の腹部造影CT(B)とを別に示す。
この患者への現時点の対応で適切なのはどれか。
浣腸
結腸切除術
抗菌薬投与
体外衝撃波結石破砕術
副腎皮質ステロイド投与

解答: c

117A36の解説

【プロセス】
①3日前から微熱(体温37.1℃)と下腹部痛(徐々に増悪)
②1年前に大腸憩室を指摘
③白血球12,300(桿状核好中球30%、分葉核好中球45%)、CRP 3.2mg/dL
④1年前の下部消化管内視鏡検査(A)ではS状結腸に憩室が多発
⑤今回来院時の腹部造影CTでは憩室周囲の脂肪組織混濁
☞①③⑤より炎症の存在を疑う。②④からS状結腸の憩室炎と考えられる。

【選択肢考察】
a 便秘に対する対応である。
b 悪性腫瘍などに対する対応である。
c 正しい。細菌感染が考えやすいため、抗菌薬投与が有効。
d 尿路結石や胆石に対する対応である。
e 感染症の背景下への副腎皮質ステロイド投与は感染を悪化させかねない。

正答率:98%

テーマ:大腸憩室炎への対応

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