117A33

18歳の男子。3か月前から周囲の視線が気になると外出するのを嫌がり、この2週間は自宅にいても誰かに部屋の中を覗かれているし、部屋で話す声を盗聴されていると訴えるため、両親に連れられて精神科を受診した。妄想が強いと判断され、抗精神病薬を処方された。服薬2日目から足がむずむずすると部屋の中を歩き回ることが多くなり、夜はむずむず感のため、不眠を訴えるようになった。
このむずむず感について正しいのはどれか。
ジストニアと呼ばれる。
両下肢の知覚低下を伴う。
睡眠時無呼吸症候群を伴う。
脳波異常を伴う。
抗精神病薬の減量により軽快する。

解答: e

117A33の解説

【プロセス】
①周囲の視線が気になる、誰かに部屋の中を覗かれている、部屋で話す声を盗聴されている
②抗精神病薬を処方された
③服薬2日目から足がむずむずする
④夜はむずむず感のため、不眠
☞①から統合失調症が考えられる。それに対して②を行ったところ、症状が出現している。薬剤性の病態であろう。③④からはむずむず脚症候群が考えやすい。なお、抗精神病薬によって惹起される本症例のような不随意運動としてはアカシジアが有名である。ゆえに市販の解説書でも本症例をアカシジアと診断しているものがある。結論、本問に回答するにあたってはどちらでもよいため、あえて診断名を確定する必要もないのだが、おそらく「どっちが正しいんですか?」系の質問がやってきそうなので一応コメントしておく。厚労省が公表しているアカシジアについての文書によれば、「薬剤誘発性アカシジアの患者がむずむず脚症候群を併せ持つ場合も多いが、むずむず脚症候群では下肢の異常感覚が一次症状としてあり、症状は夜間就床時の眠気が訪れてくる時期に発現し、入眠困難をきたすといった特徴があるのに対して、アカシジアでは眠気と関係なく、日中でも座位や臥位などじっとしていると症状が増強し、運動への強い衝動が一次症状となる。睡眠に対する影響も両者で異なっており、睡眠ポリグラフによる検討では、アカシジアではむずむず脚症候群に比べて睡眠障害がより軽度であるとの報告がある」とのことだ。しかるに本症例では足の症状が一次症状として書かれており、また不眠アピールも強い。ゆえに抗精神病薬により、むずむず脚症候群が薬剤性に惹起された、と判断するのが(あえて "アカシジア" という用語を新規に持ち出して暗記対象を増やすより)スマートに思う。が、繰り返しになるが、正答には影響しないため、受験生各人が自分なりに押さえればよいところに思う。

【選択肢考察】
a むずむず脚症候群、ないしアカシジアと呼ばれる。
b 知覚異常があるが、知覚低下はない。
c 睡眠時無呼吸症候群と本病態は直接の関係がない。
d 特徴的な脳波異常は知られていない。
e 正しい。抗精神病薬によって惹起された病態が考えやすいため、対応としてはその減量〜中止を考えたい。

正答率:96%

テーマ:薬剤性むずむず脚症候群について

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