117A32

71歳の男性。咳嗽と労作時の呼吸困難を主訴に来院した。3年前から咳嗽と労作時の呼吸困難があり、徐々に進行していると自覚したため受診した。40年前に膿胸で胸郭形成術を受けた。喫煙は20本/日を50年間。意識は清明。体温36.2℃。脈拍84/分、整。血圧140/76mmHg。呼吸数16/分。血液生化学所見:尿素窒素16mg/dL、Na 133mEq/L、Cl 91mEq/L。呼吸機能検査:%VC 45%、FEV1% 60%。動脈血ガス分析(room air):pH 7.26、PaCO2 68Torr、PaO2 48Torr、HCO3- 28mEq/L。胸部エックス線写真で透過性亢進および胸郭形成後の肺容量減少を認める。心エコー検査で右心室および右心房の拡張、心室中隔の左室側への偏位を認める。
この患者にみられる病態で誤っているのはどれか。
肺高血圧
肺胞低換気
シャント率上昇
混合性換気障害
代償性呼吸性アシドーシス

解答: e

117A32の解説

【プロセス】
①高齢男性
②咳嗽と労作時の呼吸困難(3年前から&徐々に進行)
③40年前に膿胸で胸郭形成術(これによる画像上の肺容量減少)
④喫煙は20本/日を50年間
⑤%VC 45%(<80%)
⑥FEV1% 60%(<70%)
⑦PaCO2 68Torr
⑧PaO2 48Torr(<60Torr)
⑨胸部エックス線写真で透過性亢進
⑩心エコー検査で右心負荷
☞①②④⑨より慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉の診断は難しくない。これにより呼吸不全(⑧)がみられている。③が病態に追い打ちをかけている形だろう。⑤より拘束性障害、⑥より閉塞性障害が読み取れ、この2つを合わせて混合性換気障害と判断されたい。⑦ではCO2の貯留が指摘でき、肺胞低換気と言える。⑩はCOPDによる肺高血圧の結果であろう(肺性心)。

【選択肢考察】
a 上記⑩に関する解説の通り。
b 上記⑦に関する解説の通り。
c 右心に送られるも、肺できちんと酸素化されずに左心へ戻る血流が多い場合、シャント率上昇と呼ぶ。COPDと③の影響で低酸素血症(⑧)がみられている本症例ではシャント率が上昇していると言える。
d 上記⑤⑥に関する解説の通り。
e 誤り。呼吸不全によりCO2が貯留してしまっている状態であるため、代償性ではなく、そもそもの呼吸性アシドーシスである。代謝性のアルカローシスがあって、それを呼吸で代償すべくCO2を貯めようとするのが代償性呼吸性アシドーシスなわけで、そもそも呼吸がやられている本病態では呼吸性代償が叶わないのである。なお、本選択肢は「代謝性の(腎性の)代償がとれている呼吸性アシドーシス」という日本語の解釈もできる。ただしそう解釈したとしても、HCO3-が28mEq/L(基準24程度)とあまり上昇していないため、腎性代償は不十分であることから、誤っていると判断できる。

正答率:38%

テーマ:COPDの病態について

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