117A29

67歳の女性。急性心筋梗塞の治療のため入院3日目である。3日前に胸痛と気分不快が出現し、緊急入院となった。同日、急性心筋梗塞の診断で冠動脈造影が施行され、引き続き、完全閉塞を認めた左前下行枝にステント留置が行われた。本日、病棟で突然、息苦しさを訴えた。収縮期血圧は120mmHg台から60mmHg台に低下し、SpO2 も80%前後に急速に低下したため気管挿管が行われた。気管チューブからは泡沫状のピンク色の痰の流出を認めた。心エコー検査では左室駆出率は保たれていたが、左房内に逸脱する構造物(矢印部;Aは拡張期、Bは収縮前期、Cは収縮後期)を認め、カラードプラ心エコー検査で以前に認めなかった高度の僧帽弁逆流を認めた。
急激な血行動態の増悪の原因と考えられるのはどれか。
乳頭筋断裂
心室中隔穿孔
感染性心内膜炎
左室自由壁破裂
左前下行枝の再閉塞

解答: a

117A29の解説

【プロセス】
①急性心筋梗塞〈AMI〉の診断
②左前下行枝にステント留置術後
③突然、息苦しさ
④気管チューブからは泡沫状のピンク色の痰の流出
⑤左房内に逸脱する構造物
⑥画像では⑤に加え、左房拡大を指摘可能
⑦高度の僧帽弁逆流
☞①②③よりAMIの急性期合併症を考えたい。④より左心不全による肺水腫が③の原因とわかる。⑥⑦より僧帽弁閉鎖不全症〈MR〉が予想され、⑤から乳頭筋断裂が根源と判断できる。

【選択肢考察】
a 正しい。上記の通り。
b カラードプラで心室間のシャントがみられるはず。
c 感染性心内膜炎では弁に付着する疣贅がみられる。本症例の画像のような移動性の構造物はみられない。また、AMIの急性期合併症としては非典型的。
d 心タンポナーデ様の症候が出現するはず。
e AMI症状が再来する可能性はあるも、逸脱構造やMRはみられない。

正答率:98%

テーマ:急性心筋梗塞〈AMI〉後にみられた僧帽弁逆流の原因

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