117A23

74歳の女性。胸部不快感を主訴に救急車で搬入された。2週間前に夫が突然死したため、葬儀などで忙しくしていた。本日10時ごろ、弔問のお客さんの対応中に胸部不快感を自覚した。気分不快と悪心なども出現したため、救急要請を行い、当院に搬送となった。意識は清明。脈拍96/分、整。血圧168/94mmHg。呼吸数24/分。SpO2 98%(リザーバー付マスク10L/分 酸素投与下)。心音に異常を認めない。両側の胸部にcoarse cracklesを聴取する。血液生化学所見:AST 29U/L、ALT 99U/L、CK 184U/L(基準30~140)、脳性ナトリウム利尿ペプチド〈BNP〉952pg/mL(基準18.4以下)。来院時の心電図(A)を別に示す。心エコー検査で左室心尖部を中心とする無収縮領域と、左室基部の過収縮を認めた。緊急冠動脈造影検査を行ったが、冠動脈主幹部に有意な狭窄や閉塞を認めなかった。引き続き行った左室造影写真(B(拡張期)、C(収縮期))を別に示す。
最も考えられる疾患はどれか。
急性心膜炎
冠攣縮性狭心症
たこつぼ心筋症
下壁急性心筋梗塞
前壁陳旧性心筋梗塞

解答: c

117A23の解説

【プロセス】
①高齢女性の胸部不快感
②葬儀などで忙しくしていた
③両側の胸部にcoarse cracklesを聴取
④CK上昇
⑤脳性ナトリウム利尿ペプチド〈BNP〉上昇
⑥来院時の心電図(A)ではV1〜5のST上昇とV1〜6の陰性T波
⑦心エコー検査で左室心尖部を中心とする無収縮領域と左室基部の過収縮
⑧冠動脈造影検査にて冠動脈主幹部に有意な狭窄や閉塞なし
⑨左室造影写真(B・C)にて⑦と同様の所見
☞③〜⑥あたりからは急性心筋梗塞〈AMI〉も疑うが、⑧より(少なくとも主幹部閉塞型のAMIは)否定的。⑦⑨よりたこつぼ心筋症が考えやすい。②はリスクとして有名で、①の症候も矛盾しない。

【選択肢考察】
a 急性心膜炎では心エコーによる心嚢水貯留や呼吸ないし体位による胸痛の変動をみる。心電図では広汎なST上昇が出現する。
b 冠攣縮性狭心症は夜間〜早朝に症状が出現しやすい。
c 正しい。上記の通り。
d 下壁急性心筋梗塞であれば心電図上、II, III, aVFに有意な変化をみる。
e 既往歴の記載がなく、不明。少なくとも⑦〜⑨から積極的に考えるべき病態ではない。

正答率:99%

テーマ:たこつぼ心筋症の診断

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