117A16

72歳の女性。動悸と息切れを主訴に来院した。3週間前から動悸を自覚していたが、1週間前から短距離の歩行で息切れを自覚するようになった。一昨日から夜間就寝後に息苦しさで覚醒するようになったため受診した。15年前から僧帽弁閉鎖不全症、10年前から高血圧を指摘されており、自宅近くの診療所で投薬治療を受けている。来院時、意識は清明。身長153cm、体重39kg。脈拍136/分、不整。血圧152/88mmHg。SpO2 85%(room air)。心音は心尖部を最強点とするLevine 3/6の収縮期雑音を聴取する。呼吸音は両側下肺野でcoarse cracklesを聴取する。腹部に異常を認めない。両下腿に浮腫を認める。血液所見:Hb 12.2g/dL、Ht 38%、白血球7,800、血小板21万。血液生化学所見:アルブミン3.3g/dL、AST 24U/L、ALT 18U/L、CK 72U/L(基準30~140)、尿素窒素14mg/dL、クレアチニン1.2mg/dL、血糖110mg/dL、Na 140mEq/L、K 3.9mEq/dL、脳性ナトリウム利尿ペプチド〈BNP〉588pg/mL(基準18.4以下)、心筋トロポニンT 0.02ng/mL(基準0.01以下)。CRP 1.8mg/dL。12誘導心電図(A)と胸部エックス線写真(B)を別に示す。心エコー検査では僧帽弁逸脱による中等症の僧帽弁閉鎖不全症を認め、左室駆出率は68%であった。
この患者で誤っているのはどれか。
抗凝固療法の適応がある。
左室駆出率は正常範囲である。
肺動脈楔入圧は低下している。
甲状腺機能の評価が必要である。
来院時に認めた不整脈は労作時息切れの一因である。

解答: c

117A16の解説

【プロセス】
①72歳女性の動悸と息切れ
②15年前から僧帽弁閉鎖不全症
③10年前から高血圧(血圧152/88mmHg)
④脈拍136/分、不整
⑤心尖部を最強点とするLevine 3/6の収縮期雑音を聴取
⑥両側下肺野でcoarse cracklesを聴取
⑦両下腿に浮腫
⑧脳性ナトリウム利尿ペプチド〈BNP〉588pg/mL
⑨心筋トロポニンT 0.02ng/mL(基準0.01以下)
⑩12誘導心電図(A)にて不整・f波+
⑪胸部エックス線写真(B)にて心拡大、胸水貯留、スリガラス影
⑫心エコー検査では僧帽弁逸脱による中等症の僧帽弁閉鎖不全症
⑬左室駆出率は68%
☞⑤⑫は②で説明がつく。③も相まって、心不全をきたし(①⑥⑦⑧⑨⑪)、心房細動〈AF〉(④⑩)を呈しているのだろう。

【選択肢考察】
a CHADS scoreは2点(心不全〈C〉と高血圧〈H〉が該当)であり、抗凝固療法の適応となる。
b ⑬より心室駆出は保たれているようだ。
c 誤り。左心不全により肺水腫を呈しており、肺動脈楔入圧は高値が予想される。
d AFの原因として甲状腺機能亢進症が知られているため、評価が必要である。
e 不整脈の存在により十分な心拍出が保てず、全身の酸素供給が低下する。その代償として、労作時息切れが出現している。

正答率:93%

テーマ:心不全の評価

フォーラムへ投稿

関連トピック

なし